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調教物語~ある男の性癖~
第5章 M嬢 加菜恵
「彼は営業第一課の椎名さんですよ
お怪我をされているのに訪問させていただいて
書類に署名捺印をいただいたので
お礼を申し上げていたところなんです」
「ふ~ん…それにしては丁寧なお辞儀だったわね
ところで…
私、彼と会ったことがある気がするのよねえ」
どこで会ったのかしらと
伊東加菜恵さんは
人差し指で額をトントンと叩いた。
「そりゃあ、同じ会社ですもの
廊下かどこかですれ違っているかもしれませんよ」
「いえ…会社じゃないわ…」
考え込んでいた伊東加菜恵は
ま、そんなことはどうでもいいか、と
会社の入り口に向かって
一人でさっさと歩き始めた。
『感じ悪い女(ひと)…』
誰とでも分け隔てなく話せる咲希だったが、
伊東加菜恵だけはどうしても好きになれなかった。
伊東加菜恵はと言うと
自分のデスクに座り、
ノートパソコンを立ち上げながら
椎名の事が気になっていた。
『どこかで会っているのよねえ…』
喉元まで出かかっているのに
すんなりと出てこない。
モヤモヤとした気分のまま
その日の業務が終了した。
会社を後にした伊東加菜恵は
自宅とは全く違う方向に向かって歩きだした。
けっこう家賃の高いマンションに住んでいるのだが、派遣社員の給料では、とてもではないが生活できない。
そこで彼女は夜の副業で稼ぐことにしていた。