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ご清楚ですが何か
第16章 嵐の夜
「上がってもらえよ。」

すっかり松下は住人気取りだ
というか慎吾にマウント取ってる?
嬉しいようなめんどくさいような

「じゃあ、遠慮なく。」

慎吾も断らない
幸子は仕方なくもう一個ラーメンを作る

松下は煙草を吸っていて慎吾は携帯をいじっている

十分に気詰まりだった
大人なんだから何か話せば良いのに

しびれを切らしてテレビをつける

先日幸子と慎吾をスーパーで取材したレポーターが映る

嫌な予感が当たる
一瞬だが幸子と慎吾が移ったのだ

「いやいや、編集!」

幸子は思わず声を上げる

「ここ、近所のスーパーだよな?」

松下もテレビを見ている

~カップルの性事情を突撃レポート~

今の状況にそぐわない話題だ
だが二人ともチャンネルを変えない
なんの我慢比べよ

慎吾がいつも座っていた席に堂々と松下が座っている
慎吾からしたら居場所を取られたような気分かもしれない

幸子はラーメンを机に置く

「小ネギ入れる?」

「俺には無かったぞ。」

松下がクレームをつけているのを尻目に慎吾のラーメンに小ネギを入れた

「親戚には手厚いの。」

幸子は慎吾を持ち上げてみる

「美味しい、幸子ちゃん。」

「インスタントですが。」

「小ネギが効いてる。」

小ネギごときに釣られたのね
やっすいわ

「吉村、俺そろそろ帰るわ。」

「泊まっていってもいいよ。」

幸子は冗談で言ったが慎吾が反応したのを見逃さなかった

「三原さんに殺されちゃうな。」

「ははは、冗談きつい~。」

玄関まで松下を見送る

「部長に返事するの?」

「うん、週明けにでも。」

「そっか。」

松下がヘルメットをつけている

「色々ありがとね。」

松下に二の腕をぽん、とされる

バイバイしてドアが閉まって振り返ろうとしたその時
背後から抱き締められる

「どした~?」

自分でも怖いというほど冷静な声だった

「幸子ちゃん、、。」

「ラーメン伸びるよー。」

わざとあっけらかんとした声を出してみる

「せっかく小ネギ入れてあげたのに。」

「良い匂いするね。」

「だから、インスタントですって。」

「ううん、幸子ちゃん、良い匂いする。」

「今更!」

慎吾の腕を振りほどこうとするが力が強くて勝てない

松下のバイクが走り去る音が聞こえた
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