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永眠を捨てた青少年
第1章 1
第1章
(1)
いまだ蒸し暑さが抜けきらない夜の空に、派手な音とともに大きく丸い花火が上がっては消えていく。
その光が空に広がるたびに辺りの地面や草木は明るく照らされ、崖から少し離れた一本の太い木の幹の、地面より少し上あたりに何重にもしっかりと巻きついた縄の姿が、闇の中から浮かび上がる。
縄はたるみなく幹から斜め上へと直線に伸び、その木の中で一番太い枝の上に引っかけられ、真下へと垂れ下がっていた。その先端には輪が形作られていて、輪の左右はそれぞれ女性の左右の手に握られている。
浴衣に身を包んだその女性は、一人でひじかけのない古びた木製の椅子の上に立ち、自分で握った縄の輪越しに、夜空に開いては散っていく色とりどりの光に視線を向けていた。
年齢は二十歳くらいに見える。髪は自然な感じのボブ、大きな瞳に少しふっくらした頬で、ほほ笑みでも浮かべれば愛嬌のある顔なのだろうが、その表面に感情というものが一切ない。
「どうせ死ぬつもりならヤらせろ」
突然聞こえてきた野太い声に、女性は無表情のまま振り返る。
花火の明かりが暗闇に立っている人影を照らし出す。
(1)
いまだ蒸し暑さが抜けきらない夜の空に、派手な音とともに大きく丸い花火が上がっては消えていく。
その光が空に広がるたびに辺りの地面や草木は明るく照らされ、崖から少し離れた一本の太い木の幹の、地面より少し上あたりに何重にもしっかりと巻きついた縄の姿が、闇の中から浮かび上がる。
縄はたるみなく幹から斜め上へと直線に伸び、その木の中で一番太い枝の上に引っかけられ、真下へと垂れ下がっていた。その先端には輪が形作られていて、輪の左右はそれぞれ女性の左右の手に握られている。
浴衣に身を包んだその女性は、一人でひじかけのない古びた木製の椅子の上に立ち、自分で握った縄の輪越しに、夜空に開いては散っていく色とりどりの光に視線を向けていた。
年齢は二十歳くらいに見える。髪は自然な感じのボブ、大きな瞳に少しふっくらした頬で、ほほ笑みでも浮かべれば愛嬌のある顔なのだろうが、その表面に感情というものが一切ない。
「どうせ死ぬつもりならヤらせろ」
突然聞こえてきた野太い声に、女性は無表情のまま振り返る。
花火の明かりが暗闇に立っている人影を照らし出す。