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永眠を捨てた青少年
第2章 2

(4)
「阿賀都」
鹿狩屋敷の一角、夕日の赤い光に照らされている廊下で、阿賀都とすれ違いざまに鷹之丞が声をかけた。
阿賀都はまだ二十過ぎそこそこの、屋敷では一番若い家来だ。
阿賀都は——小霧を連行する際に鱒壱とともに小霧の前にいた。
そして鷹之丞と厳高は小霧の後ろ、しかも少し離れた位置にいた。厳高と小声で交わした、小霧を座敷牢に入れることまでは聞いていなかったという会話については、聞こえていなかったはずだ。
であれば——
探りを入れやすい。
鷹之丞は立ち止まって振り向いた阿賀都にたずねた。
「某は今日の小霧さまのこと——三日前に知っていたのだが、お前はいつ聞かされた?」
阿賀都の顔に怪訝そうな色が現れた。隠そうとはしているがわずかに——驚いている気配もある。
「鷹之丞どのは……誰からそれを聞かされていたのですか?」
読み通りだ。阿賀都はわずかながら動揺している。
「阿賀都、誰の口から伝えられたかは、家来同士でも伏せる取り決めでは?」

