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レスさんとシンママちゃん【完結】
第10章 レスさんのカラダ
残りの営業時間中は事務室にこもって仕事をしていました
会社には〈週報〉〈月報〉という報告書を全国の営業部向けにメールする
数値報告だけでなく、今の問題点や、今後本社にて準備しておいて欲しい事など〈気付き〉として連絡しておくのだ
〈日報〉というものが無いだけましだ
毎週末や月末になったからといって、すんなり書けるものではないので、普段からちょこちょこメモを残しておいて、いざ書くときの材料にしておく
そんなことを続けているといつの間にか閉店の時間となってしまった
あまり話しをしたことが無い高校生の女の子が事務室に入ってくると、ロッカーの前でエプロンだけを外して、ハンガーに掛けた
無言でいるのも悪いなと思ったので「終わった?」と声をかけたが「はい」とだけ応え、ペコリとお辞儀だけをしてさっさと帰ってしまった
ボクはシャッターの降ろされた売り場の方にまわると、レジでアキさんがひとりで閉店業務をこなしていた
アキさんはボクが近づいてきたのがわかると
「もうちょっと待っててね」と言って日計表を書いていた
ボクは邪魔をしてはいけないと思って、レジには近づかず、少し離れたところにあるお客様用の簡易的なソファに座った
「高校生のバイトにも締めを教えたらいいのに」
と声をかけると
「もう少ししたらあの子就職活動で辞めるの」
と言った
なるほど教えたところで意味はないか
でも彼女が社会人になるまでの経験がアルバイトなのだから、せっかくなんで教えたらいいのにと思ったがそれ以上余計なことは言わなかった
アキさんはひとりで何でもで出来てしまう店長レベルの仕事をしているが、人材の教育という分野は興味が無さそうだった
どうせ伝えたところで「わたしがやったほうが早い」とでも言いそうだ
そうじゃないんだけどな、教育って
一人で背負い込んでしまうアキさんは確かに頑張り屋さんだと思うけど、そういうキマジメさが前任の担当者とソリが合わなかったんだ
一生懸命に…、でも不器用なやり方をするアキさんを見て、何とかしてやりたいと思うのはボクのひいき目なんだろうか