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特別棟の獣
第18章 女の深い嫉妬
ゆっくり瞼が開いて、百合は天井をぼーっと眺めている。
「百合、わかる?病院だよ」
「吏生……?」
「ごめん、百合…」
頬に手を当てると百合は「どうして吏生が謝るの?」なんて聞いてくる。
百合は優しいから事の発端が俺だなんて言わない。
「私が悪いんだよ…、言い返してあの人を怒らせちゃったんだから」
「何があったにしろ、百合を守ってあげられなかったのは事実だから」
「吏生は自分を責めすぎだよ?私は大丈夫だから」
少しの会話をしたところで面会の時間は終わってしまった。
明日迎えに来ると言って病院を出ると、俺を迎えに来た車の後部座席に乗り込んだ。
百合も、百合の母親も俺を責めたりしない。
優しいのは母親譲りなのか…
「会社に向かってくれ」
「畏まりました」
15分くらい走らせ、親父の会社のビルに着いた。
もう夕方というのもあり、帰宅する社員とすれ違って挨拶をされるが、今はそれどころじゃなかった。
最上階の社長室と書かれたドアをノックすると、親父の低い声が聞こえてきた。
返事もせずにドアを開けると「なんだお前か」とため息混じりの声がする。