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特別棟の獣
第25章 幸せな時間

ソファには大きな薔薇の花束。



ベッドには薔薇の花びらでハートの形に縁取られ、その中に2つの指輪が並んでいる。



「り、吏生……っ」


「もう、百合は泣き虫だね。指輪付けてあげるからこっちおいで」



いつだか、結婚指輪はCartierがいいねって2人で話していた。

形、ダイヤの個数、内側には2人の名前を刻む、そんな事を他愛もなく話していたのに、全部現実になって目の前にそれがある。


「俺のもはめてくれる?」

「うん」



お互いに指輪をはめて、私は自分の左手を暫く眺めていた。

凄く綺麗。


もう少しで本当に夫婦になるんだ…。

ずっと吏生と一緒にいられる。



「吏生、ありがとう」


勢いよく吏生に抱きつくと、少し体勢を崩しながらも私を抱きとめてくれる。


「1週間後には夫婦だね」


「うん。もう結婚も決まったことだし、覚悟決めてね」


「なんの?」


「今日、ゴム持ってきてないから」



それはつまり……


いつ妊娠してもおかしくないってことだよね…?
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