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第169章 大通公園

初夏の日差しがテレビ塔越しに、眩しく放射線を描いている。
札幌の「大通公園」を、啓介はキャリーバックを転がしながらノンビリと歩いていた。

木々の緑が元気よく色づき、心もときめいていくようだ。
由美との恋のように。

由美と初めてメールを交わすようになった時から、三年の月日が流れていた。
啓介の髪にも白いものが目立ち始めたものの、それほど老け込んではいない。

あの日々の思い出を糧に、今も執筆活動を続けている。
今日は札幌にある自分が設計したホテルのメンテナンス検証を終え、駅に向かっているところだった。

たしか、由美の実家も札幌の筈だ。
啓介は淡い期待をこめて昨日も夜の札幌の街を散策したが、そんな都合の良い偶然等ある筈もなく、一人寂しく夕食をとってホテルに帰ったのである。

今日は土曜日なのだが、昨日は無理に帰宅せずにホテルに宿泊した。
自分の設計したホテルの性能も確認したいこともあったのだが、微かに由美と再会する可能性にもかけたのだ。

だから、駅に向かう道をわざと遠回りにして「大通公園」を散歩がてら辿っていたのである。
たとえ会えなかったとしても、由美が暮らす街と、この素敵な公園ならきっと訪れているだろうから、彼女と同じ心地良さを共有できるだけでも嬉しいと思ったのである。