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熱帯夜に溺れる
第1章 梅雨と乙女心
 純が井上を毛嫌いしていたり苦手意識を持っているわけでもなさそうで、今日も店が空いてきた午後には純と井上の談笑現場を見かけた。
 なのに純は莉子とは一切話をしてくれなかった。こころなしか、今日は目も合わせてくれない気がする。

 そんなこんなで土曜の勤務が終わり、更衣室に戻った莉子は超がつく速さで着替えを済ませた。
 男性はほとんどがエプロンを外してそのままの服装で帰っている。着替えるとしても上着を羽織ったりシャツを替えたりする程度、女の方が明らかに着替えに時間がかかる。
 もたもたしていれば、純は帰ってしまうだろう。

 純と店員の雑談を盗み聞きして得た情報では純は自転車通勤だ。でも今日の天気は朝から梅雨空が広がっていた。
 きっと電車かバスで来ているはず。普段は自転車の莉子も今日は電車だ。

 駅前の大通りに面した青陽堂書店は大通りを抜けた先に駅があり、バスターミナルもある。店を出てからの帰り道の方向は同じだろう。だからこそ今日が話しかける最大のチャンスだった。

 今日の服装は着替えが楽なワンピースにした。ウエストをリボンで縛るタイプのワンピースは裾のレースがひらひらと可愛く、先日購入したばかりだ。
 雨の日に新品の服を下ろしたのは竹倉純と一緒に帰る作戦を実行するため。

(今日はあまり目を合わせてくれなかったなぁ。なんで……? 嫌われてはないと思う……けど)

 後ろで束ねていた髪をほどいて手ぐしで整え、ピンク色の傘を持って女子更衣室を出た。
 事務室の職員に挨拶をして5階フロアの廊下に出ると、そこには帰り支度をしてエレベーターの前に立つ純とまさかの井上がいた。

 顔には出さないように努めたつもりでも莉子の内心は「ゲッ……ッ!」という効果音で表すのが適切だ。よりによってお前がいるのかよ……とは口が裂けても言えない。

「佐々木さーん。お疲れ様」
「……お疲れ様です」

 井上は莉子の全身に素早く視線を走らせている。全身を巡ったいやらしい視線が、やがて莉子の胸元に集中し始めた。

 胸を強調する服をわざと着ておいて胸を見るなと言うのが無理な要求なのは承知の上で、好きな男以外からの粘着く視線は気持ち悪いだけだ。
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