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熱帯夜に溺れる
第1章 梅雨と乙女心
 訪れた6月第3週の土曜日。今日の勤務後に杏奈に提案された〈帰りに話しかけよう作戦〉を実行する予定だった……のに。
 莉子は最近、ある存在に頭を悩ませていた。

「佐々木さーん。これお願いできる?」

 気安く莉子の苗字を呼ぶのは竹倉純ではない。たまに同じシフトになるアルバイトの井上康介だ。

 井上はとにかくよく喋る。元来が陽気な性格なのか、勤務中でも常にペラペラと話している。
 だが愛想も良く接客は上手いため、彼が仕事中に無駄話をしていても、主任や部長は大目に見ているフシがある。穏やかな雰囲気を放ちながらも無口な竹倉純とは対照的だった。

 井上の明るい性格が混雑時のピリッとした中央レジの雰囲気を和らげる場合もあり、良く言えばムードメーカー、悪く言えば空気の読めない男。

 そんな井上と莉子は同じ時間帯にレジや商品の品出しを任され、ペアのように組まされていた。
 新人の莉子の主な指導係は莉子に厳しいパートの荒木史香と陽気な井上康介のふたりいる。確かに厳しい荒木よりは井上が指導係の時の方が面白くて楽しい。

 しかし遡れば5月の中頃からになるが、少々困った状況になっていた。
 井上は何かにつけて莉子の隣で作業をしたがる。値札付けや包装作業も他にスペースが空いていても、彼はわざわざ莉子の隣で作業を行う。

 1分でも口を閉じていられない井上は聞きもしないのに自分の身の上話を饒舌《じょうぜつ》に語った。
 彼は大学4年、通っている学校は県内では有名な私立大学だ。彼女は今はいないらしいが、井上の恋愛事情など莉子にはどうでもいい話だった。

 気さくな井上は仕事の教え方も丁寧、あの荒木が指導係となるよりも数倍マシだ。
 いい人ではある。けれど時々うっとうしい。莉子の井上の評価はそれに尽きる。

 井上が側にいる時、竹倉純は莉子の側には来ない。
 用事がないなら側に寄る必要もないと言うことなのだろう。でも井上が側にいる時は特に、純は莉子に話しかけてもくれない。
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