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熱帯夜に溺れる
第5章 沈殿する夏、静止する冬
 莉子との繋がりから与えられる甘美な快楽に酔う傍らで、由貴に言われたあの言葉が呪いのように純の心を侵食する。

 ──「女はね、無駄だとわかっていても引き留めて欲しいのよ。男がプライドかなぐり捨てて自分を必要としてくれる姿を見たいのよ」──

 男のプライドも年上のプライドも、かなぐり捨てられるなら捨ててしまいたい。言えるものなら言いたい。
「東京に行くな」と。「側にいて欲しい」と。

 永遠も一生も口にできないくせに。幸せにする約束もできないくせに。
 誓いの言葉も誓いの指輪も贈れないくせに。莉子の人生の足枷《あしかせ》にはなりたくないのに。
 どうしようもなく、純の人生には莉子だけが必要だった。

 動きを上下から前後に変えて細い腰をうねらせていた莉子が結合部の繋がりをそのままに純の胸元めがけて崩れ落ちる。莉子を受け止めた純は彼女を抱き締めながら下から激しく突き上げた。

「ンッ、アッアッ、純さっ……だめ、はげしぃっ……。イッちゃぅ……ァアンッ!」

 純の肩に顔を埋めた莉子が彼の耳元で何度も甘く絶叫し、純も息を荒くする。

「ハァハァ……、莉子……莉子……」
「純さぁ……ん……チュ、んっ、チュゥ」

 舌を絡めたキスをして結合部は奥まで繋がり、上も下もヌチャヌチャ、グチャグチャ、最後はドロドロに交ざって溶け合いたい。

 どこにも行かないで側にいてくれ……言葉にできない想いをすべて、彼は己の一部に託して莉子の内部で爆発させた。
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