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熱帯夜に溺れる
第5章 沈殿する夏、静止する冬
 ふたりが繋がった瞬間にぎゅっと抱き締められて、奥まで侵入したペニスの感覚が苦しいのに愛しい、嬉しいのに哀しい。

「アンッ、ァッ……ッ!」

 容赦なく攻めてくる快感の波に抑えきれずに漏れてしまう莉子の声は、純の唇で塞がれる。

 純に何度も愛されて意識が飛びそうになった時に彼女が目にしたものは、莉子の左手薬指を咥える純の切なげな顔だった。

「どうしたの?」
「莉子の赤い糸の先にいるのは、どんな男なんだろうね」

 そんなに哀しい瞳でそんなに優しく笑わないで?
 離れられなくなるから、離せなくなるから。

「……それはプロポーズのつもり?」
「できるものなら、してるかな」

 もう12月? まだ12月?
 あとどのくらい一緒に居られる?

 純の唾液が莉子の薬指に絡み付いて、指先に感じるねっとりとした舌の質感に背筋がゾクゾクとする。

「離したくない……」

 莉子と繋がった身体を揺らしながら呟いた純の心の叫びはちゃんと莉子に届いていた。

 いっそのことこのまま壊れてしまいたい。
 壊れるくらいに、抱いて欲しい。
 壊れるくらいに、愛して欲しい。
 壊れるくらいに、愛しているよ。

 出逢いの春、結ばれた夏、深まる秋、冬を越えたらまた春がやって来る。
 どれだけ身体が繋がっても、どれだけ心が繋がっても、抗えないことがある。

 男と女はどこまでも男と女で決してひとつの個体にはなれない。ふたりの人生もひとつにはならない。次の春には莉子の隣に純はいない。

 タイムリミットは迫っている。
 どうかこのまま時よ止まれ。
 季節は進まず冬のまま、哀しみの恋人達を永遠に目覚めることのない夢の世界に閉じ込めて。

 夏が沈んで、冬は止まる。
 ふたりは、初めて結ばれたあの熱帯夜にいつまでも、いつまでも、溺れていたかった。
 ふたりは、まだあの熱帯夜を求めて、静止した冬を永遠に彷徨《さまよ》い歩いていた。
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