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熱帯夜に溺れる
第2章 夏の夢
 今日は秋元結梨とも休憩が合わず、ひとりで黙々と食事をとる。
 告白すると決めて緊張状態の心を察した胃が小さくなってしまったのか、食欲がまったくない。

 純は大橋の指導をしているから莉子の近くにはいてくれない。忙しい今日は暇な時に雑談でも……な状況でもない。

 結局、昼食は半分も食べられなかった。告白の件を考えるだけで速くなる鼓動を抑えつけて莉子は机に突っ伏した。

(ううう……どうしたらいいんだ。次? 次の機会を狙えばいいの? でも今日は名付けて恋する乙女メイクをしてきたのよ。告白する気マンマンで出勤したのよ。それを今更、やーめたは出来ないよぅ……)

 莉子は告白をした経験がない。19歳と数ヶ月にしてこれが人生初の告白だ。

(告白って何をどうしたらいいの? 漫画みたいに好きですって言えばそれでオーケ?)

 悶々とした昼休憩を過ごして午後の業務が始まる。
 午後は13時から16時までレジ担当、16時から勤務終了の18時までは商品の品出し、掃除と巡回、ゴミ捨て。

 純の昼休憩は13時になっていて莉子と入れ違いだった。莉子が純と一緒にいられる時間は彼が休憩を終えた14時から16時まで。今日に限ってなんと言うすれ違い。

 大橋のサポートをしている時に彼女はふと気付いた。
 自分はもう完全な新人ではない。出来ないこと、知らないこと、未熟な点は多くあるが、莉子よりも新人が入ってきたことで、莉子はサポートやフォローを無条件にしてもらえる立場ではなくなってしまった。

 主任には電話も出られる時は出て欲しいと言われている。文具フロアには頻繁に客からの電話がかかってくる。
 商品の取り置き、予約の電話、希望の商品は置いてあるかの確認や予約の場合は、電話を受けながら予約票を書く時もある。

 電話に出る前は少し緊張する。でも出てしまえば客の希望の商品を一緒に探したり予約をしたり、そのやりとりは楽しく感じていた。
 莉子は接客業が好きだ。それはネイリストの夢にも通じる、必要な気持ちである。
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