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熱帯夜に溺れる
第3章 熱帯夜に溺れる

コーヒーが美味しいと評判の店は市街地から外れたのどかな風景の一角にポツンと建っていた。よくあるチェーン店のカフェではなく個人が経営する昔ながらの喫茶店では、人の良さそうな初老のマスターが出迎えてくれた。
純はホットコーヒー、莉子はアイスコーヒーを頼み、莉子だけがラザニアを注文した。
アイスコーヒーは確かに美味しかったが、コーヒーの違いがわかるほど莉子の味覚はまだ大人ではなかった。チェーン店のコーヒーとの違いも正直よくわからない。
でも美味しかったコーヒーの味は莉子の記憶に鮮明に刻まれた。今はそれだけでいいと思える。経験値はこれから上げていけばいい。
ラザニアもとても美味しかった。ラザニアを頬張る莉子を眺めて微笑する純と交わす会話も楽しい。
外は夏の日差しがさんさんと照りつけていても、快適な温度で冷房の効いた店内では穏やかなランチタイムが過ぎていく。
しかし会計の時に莉子はほんの少し戸惑いを感じた。純は手際よくふたり分の金額をマスターに渡していた。
莉子も財布を出そうとしていたのに、彼の動作があまりにも洗練されていて出しそびれてしまった。
「お金……」
「気にしないでいいよ。男が出すのは当たり前」
年上だから奢って当然、年下だから奢られて当然ではないけれど、純からは莉子よりも長く生きている分、蓄積された大人の余裕を感じた。
純はホットコーヒー、莉子はアイスコーヒーを頼み、莉子だけがラザニアを注文した。
アイスコーヒーは確かに美味しかったが、コーヒーの違いがわかるほど莉子の味覚はまだ大人ではなかった。チェーン店のコーヒーとの違いも正直よくわからない。
でも美味しかったコーヒーの味は莉子の記憶に鮮明に刻まれた。今はそれだけでいいと思える。経験値はこれから上げていけばいい。
ラザニアもとても美味しかった。ラザニアを頬張る莉子を眺めて微笑する純と交わす会話も楽しい。
外は夏の日差しがさんさんと照りつけていても、快適な温度で冷房の効いた店内では穏やかなランチタイムが過ぎていく。
しかし会計の時に莉子はほんの少し戸惑いを感じた。純は手際よくふたり分の金額をマスターに渡していた。
莉子も財布を出そうとしていたのに、彼の動作があまりにも洗練されていて出しそびれてしまった。
「お金……」
「気にしないでいいよ。男が出すのは当たり前」
年上だから奢って当然、年下だから奢られて当然ではないけれど、純からは莉子よりも長く生きている分、蓄積された大人の余裕を感じた。

