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熱帯夜に溺れる
第3章 熱帯夜に溺れる
「俺の両親……主に父親だけど、親父は兄貴が死んだショックとストレスを俺に暴力でぶつけるようになったんだ。兄貴は両親の期待を背負っていたからね。兄貴とは違って父も母も俺には期待していなかった」
「ご両親とは今は……」
「家を出てからはたまに顔を見に実家に行くくらい。俺も成人した大人だからさすがに暴力はなくなったよ。大学まで出してくれたことには感謝してる。でも会いたいとは思わないね。できれば会いたくない人達……ってやつ」

 彼の家族の話を聞いて、ああ……と、莉子は納得した。
 純は時々、悲しそうな瞳をしている。それに気付いたのは純に恋心を抱き始めてすぐの頃。

 彼の瞳に悲哀が宿るのはい決まって家族連れの接客をしている時だった。塗り絵やクレヨンを買ってもらって笑顔の子供と手を繋ぐ母親や父親、仲良く買い物に来た兄弟、姉妹。
 どこにでもいるありふれた家族の光景が純の心に鋭い棘を刺していたのだろう。

 道が海岸線に入った。運転席側の窓からはキラキラ輝く青い海が見えて、夏のシーズン真っ盛りの海にはサーフィンを楽しむ人の姿が遠目に見える。

「兄貴は親に必要とされていた。でも俺は違うから……。だからなんで死んだのが俺じゃなく兄貴だったんだろうって考える。今でも命日が近付くと兄貴を思い出すよ。こんな暗い話、ごめんね。莉子ちゃんの家族の話を聞いていたら、俺も自分の家族のことを話しておきたくなったんだ」
「聞けて良かった。話してくれてありがとう」

 人で賑わう海水浴場の地帯を避けて堤防沿いに車が停車する。
 莉子と純は堤防に並んで海を見ていた。

 何も話さず触れ合わず。いつまでもいつまでも、夏の青い海を見ていた。
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