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熱帯夜に溺れる
第3章 熱帯夜に溺れる
 右を見ても左を見ても、前にも後ろにも人の壁ができている。ドーム型の屋根の向こうにはまだ眠らない夏の太陽がアイスブルーの空に浮かんでいた。

 8月最初の日曜日、莉子は県内最大の収容人数を誇るナゴヤドームの前で、友人の杏奈と共に人の波に揉まれていた。

 彼女がここを訪れた目的は野球観戦ではない。今日はこのドームでUN-SWAYEDのライブが行われる。
 今回の全国ツアーは7月の北海道公演からスタートし、大阪、愛知、福岡、東京の5大都市を夏の間に巡る。ラストを飾る東京公演の開催場所は東京ドームだ。
 バンド初のツアーとあって地方ファンは狂喜乱舞、争奪戦のチケットもファンクラブ先行でなんとか2枚分を死守できた。

「2回デートしてキスがまだなの?」
「うん。ねぇ、これってどういうことだと思う?」

 ツアーグッズの購入列に並ぶ莉子達が待ち時間に話す話題は、もちろん恋の話。

「手が早い男よりはいいじゃん?」
「それはそうなんだけどぉ。でも抱き締めて顔がすぐ近くにあるのにキスはしないって、ちょっとショック」

 初デートの翌週の日曜に莉子は純と2回目のデートをした。その際も、純は莉子を抱き締めはしても抱擁以上の行為には及ばなかった。
 抱き締めて頭を撫でてもらえるだけでも、もちろん嬉しい。

 でもどうしてキスをしてくれない?
 どうして、それ以上触れてくれない?

「莉子からキスしちゃえば?」
「できれば最初のキスは向こうから迫って来て欲しい」
「ああ、それわかる。なんかさぁ、相手に唇を奪われたいんだよね」
「そうなの、奪われたいの。俺の彼女可愛いなぁ、キスしたいなぁ、って思われて奪われるあの感じにきゅんとする」

 穏やかで優しい男も魅力的だ。しかし時には強引な男らしさで翻弄されたい。

「そう言えば、莉子が高校の時に付き合ってた元彼は付き合ったその日にキスしてきたって言ってたよね」
「で、付き合ったその日に押し倒してきてヤッちゃった。お互い高校生だったしねぇ、盛ってたんだよ」
「元彼がそれだと、竹倉さんはちょっと物足りないかもね。でも大事にされてる証拠だと思うよ」

 杏奈はそう言ってくれるが、大事にされるだけでは莉子は物足りない。
 少し前までは両想いになれただけで幸せだったのに、今は純に触れたい、純に触れて欲しい。
 自分の欲深さに、小さな溜息が漏れた。
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