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熱帯夜に溺れる
第1章 梅雨と乙女心

「新人さん?」

 心の中で荒木への愚痴をぼやいていた時に声をかけられた。教えてもらったばかりの値札付け作業の手が一瞬止まる。
 視線を上げた先には彼女と同じ書店のロゴ入りエプロンをつけた長身の男性がいた。

「あ……はい。昨日から……」

 まずはこちらから名乗って挨拶をするのが礼儀なのに、どうしても上手く言葉が出ない。

「ここに女の子が入ってくるのは珍しいね」
「そうなんですか?」

 なんとか会話を繋げる。厳しい荒木は幸いなことに接客中だ。

「うん。ここは女の子あまり入って来ないんだ。新しい人が来ても女の子は大抵向こう行き」

 彼は雑貨レジに視線を向ける。
 確かにあちらは女性店員が多い。女性の客が大多数なこともあり男性店員は雑貨レジにはヘルプ以外では入らない。

 それとは逆に莉子が配属された中央レジは男性がメインの場所。女性と言えば莉子と荒木、ヘルプで初日の指導係をしてくれた雑貨レジ担当の秋元結梨くらいしかこの2日間では見かけなかった。

 中央レジが忙しくなれば雑貨レジや3レジから秋元結梨や他の女性店員がヘルプに訪れるけれど、基本的に中央レジは女性が少ないらしい。

 正直、雑貨レジ担当がよかったと莉子は思っていた。あちらの方が可愛い雑貨売り場に囲まれて仕事ができるし、初日と今日に顔合わせした店員達も人当たりが良い。

 中央レジのバックヤードには文具売り場の部長や文具売り場の主任のデスクがある。今もついたてを挟んだバックヤードに主任が常駐するこのレジは、なにかと緊張する。

「ここは大変だろうけど何かあればいつでも言ってね」
「はい。ありがとうございます」

 これが佐々木莉子と竹倉純の出会いとなった。

 竹倉純のことは初めはいい先輩だと思うだけだった。重い荷物を運んでいると代わりに持ってくれ、困っている時はさりげなくフォローしてくれる。
 大変な時にいつも純が助けてくれるのはなんでだろう……なんて、忙しい仕事中に考えている余裕はなかった。

 とにかく一刻も早く仕事に慣れようとしていた莉子はまだ、純のことを考えずにいられた。あの不可解な、休憩室の謎に直面するまでは。
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