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熱帯夜に溺れる
第4章 酔芙蓉の吐息
 暦が10月を迎えた最初の日曜日、莉子は純の自宅で過ごしていた。15時のおやつにホットケーキを作っていた彼女は、純に名を呼ばれて振り返る。

「携帯鳴ってるよ」

 彼がキッチンまで持ってきてくれた携帯電話を一瞥した莉子は眉をひそめた。着信画面には伯母の二文字が載っている。

「……伯母さん?」
「電話だろ? 席外そうか?」
「ううん、大丈夫」

 東京に住む伯母は母親の姉だ。伯母には幼い頃から可愛がってもらっている。
 席を外さなくてもいいと言ったが、純は煙草を片手にベランダに出てしまった。彼の気遣いに感謝して、莉子は鳴り止まない携帯電話の通話に応答した。

{莉子ちゃぁーん! 久しぶりぃ}

 相変わらずハイテンションな伯母の声に莉子は電話越しに苦笑いを返す。どちらかと言えば莉子の母はおとなしい性格で、姉である伯母は型破りで破天荒だと親戚の中では有名だった。

 ただ性格は真逆でも姉妹仲は良いらしい。元の性格が引っ込み思案な自分と社交的な弟みたいだなと、莉子は密かに思っている。

{お母さんに聞いたよ。ネイルサロンの就活、苦労してるんだってね}
「うん……。経験者優遇がほとんどで、面接もさせてもらえないままお祈りメールだけがくるの。どこの店も新人はいらないみたい」
{不景気でどこの業界も今は人を育てる余裕がないのよ。美容業界は特に景気が良くて初めて成立する業界だからねぇ。景気が悪いと皆、生きていくだけで精一杯になるでしょう? 衣食住のうちの、〈着飾ること〉に関してはお金がないと優先されないの}

 実業家の夫を持つ伯母は、東京で美容関連会社を経営している。自身がオーナーを務めるエステサロンの他、最近は産後ダイエット専門のジムの運営もしているとか。

{ねぇ莉子ちゃん、あなた東京で働いてみない?}
「東京って……伯母さんの会社で?」
{そうよ。新規事業でネイルサロンを作るの。場所は恵比寿、オープン予定日は来年4月よ}

 やり手の伯母が新規開拓を狙っている業界がネイル業界。1号店である恵比寿店のオープニングスタッフを募集中らしく、スタッフにはベテランだけではなく、美容専門学校やネイルスクールを卒業したばかりの新人も求めているそうだ。
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