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木の実を集めて君にあげる
第1章 桜の樹の下で出逢う
賑やかな同じ制服を着た集団は、
まるで猿山の猿みたいだ。


僕は心の中で思った。
この前、動物園で見た猿。


うるさいし、乱暴。




手を繋いでいるママを見上げると、
優しく笑ってくれる。


僕は猿じゃないよ?
大人しくてお利口でしょ?

と、心の中で呟いた。



ふと見ると、
僕と同じように父親と母親の両方から手を繋いで貰っている一際小さな女の子が居た。

その子も猿じゃなかった。


お利口に大人しくしている。

っていうか、少し涙を滲ませた目で、
ビックリしたような顔で猿たちを見ている。


サラサラの髪を2つに纏めて、
紺色のリボンをつけて、
妖精みたいに儚げで飛んでいきそうだった。


「みずきさん、この後、先生の処に1人で行ける?」と言われて、
唇を噛み締めて母親を見上げてるのが見えた。

今にも泣きそうな顔をしている。


「あら、悠介さん。
お姫様が困っているから、
連れて行ってあげたら?
出来るわよね?」とママが言った。


「勿論!
僕、お利口だもの」と言うと、
その小さい女の子に手を差し伸べて言った。


「僕が連れて行ってあげるよ?」


女の子は少し困ったような顔をする。

女の子の母親が、
「まあ、王子様が来てくれたみたいね?
ありがとう。
お名前は?
そう!
悠介くんね?
この子は、みずきよ?
みずきさん、悠介くんが先生の処まで連れて行ってくれるって?」と言って、
その子の手をそっと離した。


女の子は優雅にバレリーナのように腰を折ってお辞儀をして、
僕に手を差し伸べた。


僕は少し照れながらも誇らしい気持ちで彼女の手を引いて、
桜の花吹雪が雪のように舞う園庭を歩いて行った。



それが、僕と瑞樹ちゃんの初めて出逢った日だった。


お受験の塾っていう処ではお喋りで煩い女の子しか居なかったから、
こんなに大人しくて儚い女の子が居ることにビックリしてしまって、
魔法にかかったみたいに一瞬で虜になってしまった。


僕のママと瑞樹ちゃんのお母さんは、
その後、お喋りをして、
意気投合したのも後から知った。

その流れでPTAの役員を2人で引き受けたという話も後から聞いた。


それが後々、
再会の手助けになることも、
その時は知らなかった。



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