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私が小さな男の子を好きになった理由
第8章 別れ
「うえっ・・・うぎぃえーん・・・・。」
ヤツの鳴き声が公園に響いていた。

何人かの小学生が何ごとかと、遠巻きに見つめている。
太い眉毛のサル顔が、人目もはばからずに号泣していたからだった。

私は何も言えず、ヤツの泣き顔を見つめていた。
すると、居ても立っても居られない気持ちになって、ヤツの身体を抱きしめていた。

身長150㎝のヤツは子供のようで、私の胸にスッポリ頭がおさまる。
まるで母親の如く、私は愛情をこめて抱きしめていた。

だって、これで二人は別れるのだから。

私の父は外交官で。
中学卒業のあと、ヨーロッパに旅立つ。

永遠の別れではないけれど。
再会できる日は遠い。

大好きな小さな男の子は。
私から告げられた残酷な話を疑いもせず、泣きだしたのだ。

こんな可愛いヤツ。
ギュッとしない筈はない。

春間近の公園で。
薄い西日が差すジャングルジムの前で、私達は別れのハグをした。

10年前。
切ない日の思い出が今、私の脳裏に蘇っていた。

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