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月あかりの夜
第8章 彼女は手を握り返した

 左に行くと人通りは途絶えた。

 辺りに誰も居ない。

 彼女はすたすたと路地を右に曲がって行くと、

「あなたの覚悟を訊きます。私をどうするつもりですか。

 奥さんとのSEXを見せたでしょう私に。

 私にも同じことできますか奥さんと」とゆっくり静かに言うと右手を出した。

 
 彼女が止まった場所はラブホテルの前であった。

「手を取って入口に向えば従いますが、手を取らなければ終わりにします」と重ねて言った。


 眼と眼が見つめあったまま、固まった。それは一瞬だったか、永遠だったが分からない。

 緩やかに手を出して、彼女の手を握った。
 
 柔らかくて少し冷たい。

 彼女はその手を握り返した。
 
 ぎゅっと。

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