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雨の降る夜は傍にいて…
第3章 9月の雨(September Rain)
 7 懐かしい呼び名

 今夜の接待されるお店は最近オープンし、寿司会席料理が人気の和食店であった。

「ええと、黒田建材さんに呼ばれたんですが…」
 と、わたしは入り口の店長さん風にいる方に声を掛ける。

「あ、はい、伺ってます…あっ」
 そう応える男性が、わたしと彩ちゃんを見て、そして再びわたしを見て驚いたように小さく声を上げた。

「あっ、あの…みっき先輩ですよね」

「えっ…」

 みっき先輩…

 それは懐かしい響きであった。
 そしてそれはわたしを一瞬にして、中学生時代へと懐古させる言葉であったのだ。

 みっき先輩、みっき、みきちゃん、みきさん…

 わたしは美紀谷ゆり…

 みきたにゆり…

 だから、小学校時代からの先輩、同級生、後輩、幼なじみ等々の昔からの親しい知人関係者は、わたしの事をそう呼んでいたのである。

「えっ…」

「みっき先輩、俺っすよ、服部光弘、はったりっすよ」

「服部…
 はったり…
 ああ、はったりくんかぁ…」

「そうっす、はったりっすよぉ」

 服部光弘…

 はったり…

 そう彼は小学、中学時代の一つ年下のバスケット部絡み、そして幼なじみ的ともいえる後輩であったのだ。

「うわぁ、懐かしいわぁ…」
 思わず懐かしさに心が、声が弾んでしまう。
 そう、彼とは約15年振り位の再会であろうか。

 最後に見かけた時は、確かお互いに大学生だったかなぁ…

「懐かしいっすねぇ、ここ俺の店なんすよ」

「えっ、そうなんだぁ」

「あ、はい、ようやく独立したんすよ」

「すごいわねぇ…」

「あざっす、じゃあ、ご案内しますから…」
 そう言ってはったり、いや、オーナーはわたし達を案内する。

「こちらです、じゃ、みっき先輩また…ごゆっくりっす」

「うん、ありがとう、またね…」
 わたしはそう彼に応え、案内された個室に入る。

「黒田専務、すいません、お待たせしましたぁ…」
 と、わたしは引き戸を開けながら挨拶をすると、中に、黒田専務が座って待っていた。
 そしてもう一人、男性がいたのである。

「あ、美紀谷社長、わざわざすいません…」

「あ、いえ、お待たせしちゃって…」
 と、互いに挨拶を交わす。

「あ、社長、こちらは、鈴木運送の鈴木専務で、商工会青年部の後輩なんですよ…」
 
 よかった、彩ちゃんを連れて来て…



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