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雨の降る夜は傍にいて…
第3章 9月の雨(September Rain)
 6 雨の邪気…

「社長ぉ、ボーッとしてないでくださいよぉ、じゃあ、わたしぃ、着替えてきていいですかぁ…」

「あっ、ごめん、勿論よ、うんと刺激的にお洒落してきてね」

「はぁい…」
 彩ちゃんはそう明るく返事をして、一度着替えに自宅に戻ったのだ。

 あ、いけない、彩ちゃんがあんな事、あの彼、進藤進さんの事なんか訊いてくるから、つい、昔の事を思い出しちゃったわ…

 でも、多分、また彼も自然消滅してしまいそうであった。

 なぜならば、ほぼ殆どの男達が継続的な付き合いを望んでくるのである…

 それは仕方のない事でもあり、そう言い寄られるわたしにとっても凄く有り難い、嬉しい事ではあるのだ。

 だが、わたしにとっては男として、彼氏としては需要がないのである。
 ただ、雨の降る夜に傍にいてくれればよいのである。

 だが、わたしの選ぶ男達は皆、素敵な魅力のある男達であり、公私共々に成功し、自分自身に、自分の人生に自信がある男達なのであったのだ。
 だから、わたしがそんな継続的な彼らの想いを断ると

 なぜだ…

 どうしてだ…
 
 じゃあ、どうしたらよいのだ…
 等々、おそらく彼らのプライドをわたしが傷つけてしまうのであろう…
 皆が、しつこいのである。

 すると、今度はそのしつこさにわたしが醒めて、シラケてしまうのである…

 そして…自然消滅なのだ。

 ああ、やはり、天の邪鬼だわ…

 いや、雨の邪気か…

 わたしは、わがままな、傲慢な、ひねくれものの女なのであるのだ。

 今夜もきっとそうなんだ…

「あっ、違うわ…」
 思わず声が出てしまう。

 違うわ、今夜はあのスーパー彩ちゃんが、いる、いてくれるのだ…

 こんな雨の邪気のわたしをフォローしてくれるはずなのだ…

 今夜は、少し楽しみになってきた。

 あのボンボン専務がどうするのか…







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