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雨の降る夜は傍にいて…
第4章 台風12号MUIFA(ムイファ)
 10 彩ちゃん劇場 ⑨

 次の土曜日、黒田正明専務とさっそく『夢の国』に行く事にしたのだ。

 朝10時、まあくんは『L』のマークの高級4WDのクルマで迎えに来た。

 あ、この日からわたし達二人は
『まあくん』
『彩ちゃん』
 で、呼び合う仲になったんでぇす。

「まずは横浜に行かないか…」

「えっ、横浜…」

「うん、ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルのセミスイートをリザーブしちゃったんだ」

「ええっ、それって帆の半月型のカタチのホテルですよねぇ」

「あっ、うん」

「セミスイートってぇ、すごぉい…」
 わたしは一気にテンションマックスに上がって、思わず運転中のまあくんに抱き付いてしまった。

「お、おい彩ちゃん、運転中だよ」

「あ、あぁごめんなさぁい…
 でもぉ、嬉しくてぇ…
 あっ、そんな一流ホテル行くならぁもっとぉフォーマルな服にすればよかったぁ…」
 そうなのである、『夢の国』にすんなり行くとばかり思っていたから、Gジャンに、膝丈のジーンズのスカートにスニーカーの姿であったのだ。

「ああ、ごめん、じゃあ、伊勢佐木町辺りでフォーマルな服を買ってあげるよ」

「ええっ、そんなぁ…」

「彩ちゃんの為だから…」

「うわぁぁ…」
 わたしは運転中のまあくんの頬にキスする。

 ヤバい、彼を虜にして落とした筈なのに、わたしが落ちちゃう…

 やはり、女は、お金、高級車、高級ホテル…等には、弱いのである。

 そしてまずは横浜の中華街で昼食を取り、食後に山下公園や、赤レンガ倉庫辺りを散策した。

「うわぁ、まるでぇ、デートみたぁい…」

「いや、彩ちゃん、デートだから、俺、本気だから…」
 と、突然、熱く告白された。

「あっ…
 ま、まあくん…
 わ、わたしも…
 本気………だから……」
 思わず、流れでそう応えてしまった。

 これって…

 ミイラ盗りが、ミイラに…

 なのか…

 すっかり雰囲気に飲み込まれてしまっていたのです。



 
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