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雨の降る夜は傍にいて…
第5章 秋冷え…
 4 笑顔…

 わたしはトイレに行こうと立ち上がったら、意識を失い、倒れた…らしいのだ。

 その記憶は無かった…



「……………あ」

 意識が戻る。

 あ、ここは、どこ…だ…

 目をゆっくりと動かし、周りを確認する。
 
 ズキズキズキズキ…
 頭が激しく痛む、そして、胸の動悸も高鳴っていた。

 あ、そうだ、わたしはヤケ酒を飲み、倒れたのだ…

 いや、倒れたらしい…

 どうやらお店のソファーに横に寝かされているようである。
 そして店内は、営業時間が終わっているらしく、店内は薄暗くなっており、BGMも止まっており、静かであった。

 ああ、やってしまった…

「う、うう…」
 わたしはゆっくりと起き上がる。

 ズキズキズキズキ… 
 激しい頭痛がし、まだ少し気持ちも悪い。

「おっ、気づいたな」
 さっきの店長風の男性がわたしに気付き、そう言葉を掛けてきた。

「あ、わ、わたし…」

「はい、ヤケ酒かっ食らって、絵に書いた様にひっくり返ったんです」
 と、笑いながら言ってきたのだ。

「えっ、あ…」
 恥ずかしかった、穴があったら入りたかった。

 絵に書いたように…

 ザマは無い…

「す、スイマセン、あ、か、帰りま…」
 そう言って起き上がろうとする。

「あっ、っくっ…」
 まだ、かなり頭が痛かった。

「ああ、まだ早いよ、まだ横になってなよ…」

「えっ、で、でも…」

「大丈夫、もう営業時間終わってるからさ…」
 その時、そう言ってくれた店長風の男性の顔を初めてちゃんと見た。

 ああ…

 ああ、優しそうな笑顔、そして目尻のシワ…
 わたしは一目惚れをしてしまう。

 わたしはこんな優しい、目尻にシワを寄せて笑う、そして白い歯を輝かせる笑顔の男がタイプなのである。
 そしてその男に父性を感じてしまうのだ。

 そう、わたしはややファザコン気味であったのである…

 ドキドキドキドキ…
 胸が高鳴る。

 ズキズキズキズキ…
 ヤケ酒で頭痛が酷く痛む。

 ザワザワザワザワ…
 心が騒めく。

「気にしなくていいから、まだ横になってなよ…
 ゆり先生…」

 えっ…

 突然、彼がわたしの名前を呼んできたのだ。

 えっ、な、なんで…

 




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