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雨の降る夜は傍にいて…
第6章 小夜時雨(さよしぐれ)…
 2 心の隙間

 わたしはあの12年前の彼、大塚浩司との3年間の不倫という関係から、その時に体験したあの心から震える様に燃え、そして身悶えするようなセックスの激しい快感から、それまでの恋愛観が歪に、歪んでしまったのだといえるのである…

 9年振りに彼に抱かれたあの夜に、別れてからそれまでの約5、6年間という期間、虚無感といえる程のセックスに於いての不感症に近い感覚を、たった一晩で取り戻してしまった。
 そしてその時に感じた激しい絶頂感に、彼とのカラダの絶対的な相性の良さを改めて感じ、認めた…
 の、だが、なぜか、なぜか、心の隙間は完全には埋まらなかったのである。

 別れてからの数年間、いや、改めて再確認してみると約5、6年間という期間の時間に感じていたあの心の絶望感と悲しみ、そしてカラダの不感症といえる程の虚無感に、暫くは心が悲鳴を上げて苦しんでいたのだ。
 そしてそれらの辛い思いの全ては、奇跡的な再会からの彼との一晩の逢瀬で感じたカラダの絶頂感により瞬く間に虚無感が埋まったのである。

 だが、しかし…

 しかし、なぜか…

 なぜか、心の隙間は完全には埋まらなかった…
 確かに気持ちは昔の様に昂ぶり、高まってはいたのだ。

 そして新たにわたしが抱えている、心の傷痕と、2度のガン罹患による手術によって出来てしまったカラダの傷痕の影響による自律神経の疼きは彼の傍に居て、抱かれる事により治まってはいる、そして心から穏やかに、和やかになれているのだが…

 しかし…

 なぜか…

 なぜか、心の昂ぶりに、高まりに微妙な隙間を感じているのである…

 カラダが感じていた別れてからの虚無感といえる隙間は確かに埋まった、だが、しかし、心の隙間は完全には埋まってはいないのだ。
 いや、再会したあの夜には心もカラダも完全に埋まった…
 と、感じていた。 

 だが、時間が経つにつれ、そして再会し、復縁して2カ月目のこの12月の初冬に…

 心の隙間の存在を完全に自覚をし、そして、それが更に広がってきているのを感じていたのである…

 そしてその心の隙間の原因が、このわたしの歪に歪んだ恋愛観からのせいだという事も分かってはいたのだ。

 歪んだ恋愛観…






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