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雨の降る夜は傍にいて…
第6章 小夜時雨(さよしぐれ)…
 3 小夜時雨に疼く

 季節は12月になっていた。

 師走、初冬…

 日々、少しずつ寒さが厳しくなり、最近の夜には毎晩の様に
『小夜時雨』
 と、いう、冷たいにわか雨的な通り雨が降っていた。

 そしてこの冷たい時雨が、わたしの心とカラダを疼かせてくるのである…
 そしてわたしはその疼きを治める為にも、夜になると彼、大塚浩司の温もりとカラダを求めてしまっていたのである。

 だが、こうして彼の存在を求め、抱かれれば抱かれる程に心の隙間が少しずつ広がっていく様な感じがしていたのであった…

 昔の様に、いや、もしかしたら昔以上にわたしを愛してくれているのは十分に感じてはいるのだが、なぜか、少しずつ広がってきているのを感じていたのである。

 9年振りの彼は相変わらずに数軒の飲食店を経営しており、この昨今のコロナ騒動にも係わらずに経営は順調そうで、今は、当時の街以外に、わたしの住む街にも2軒程出店進出していたのだ。
 そして最近になって知ったのであるが、偶然、彼と再会した
 ワインバー『エンヤ』も、彼の店であったのである。

 やはり、この再会は必然の流れに導かれたモノなのであろうか…
 そんな事を感じてしまってもいたのだ。
 そして彼は経営している数軒の飲食店のエリアの中心の街に住んでおり、そのマンションの所在地がわたしの住んでいる街でもあったので、気楽に通えていたのである。
 
 だが、わたしは心の隙間を感じているのであるが、なんだかんだ理由を付けながらも、わたしは3日と開けずに彼のマンションへ通っていたのだ。

 そしてそれは、この心の隙間を埋めようと無意識に感じていたせいなのかもしれなかった…

 そしてこの12月という時期はわたしの仕事での繁忙期でもあったのである。

 そしてそんな多忙の中で、わたしの中で、彼を愛しているのにも係わらずに少しずつ広がってきている心の隙間の原因を考えていた…

 それは、こんなにも彼を愛していると自覚までしているのになぜなんだろう…
 と、不思議に思えて仕方がなかったからであったから。

 そして再び思いの記憶をあの最後の3年目である、9年前の夏の終わりの頃へと心を懐古させ、顧みていく…






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