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雨の降る夜は傍にいて…
第6章 小夜時雨(さよしぐれ)…
 16 注目度

 本当は…

 わたしだって分かってはいた…

 ただ、その現実と向き合いたくなかった…だけなのだ。

 逃げて、避けて、逃避していたのである。
 そして、絶対に何とかする、いや、何とかなる、何とかしてみせる…
 と、楽観視していたのであったのだ。

 

 夏休みが終わり、浩司の娘の美香ちゃんを中心とした来春入学決定のメンバー達が毎週土日、と祭日に練習に参加する様になっていた。
 そして当然の様に浩司の奥様や、他のメンバー達の親御さんがその練習の為に送迎をしてくるのである。

 そんな流れのある10月下旬の日曜日の練習が終わった時であった…

「この前の夜、○○○ショッピングモールの映画舘で美紀谷先生を見かけたんですよぉ」
 と、来春メンバーの一人の母親がそう云ってきたのである。

「えっ、あっ、あの夜…ですか」
 確かにその夜はどうしても見たい映画があったので、一人でレイトショーを観に行ったのであった。

「でも映画上映前だったし、悪いかなって思って声掛けなかったんです…」

「ええ、そんな構いませんのに、気軽に声掛けて下さい…」
 と、そう返すと。

「でもぉ、もしかしたら彼氏さんと一緒かなぁって…」
 そうにこやかに云ってきたのである。

「ええー、一人でしたよぉ…」
 言い訳ではないが、そう言った。

「この前も、△△中学の○○ちゃんの親御さんが先生見掛けたって言ってましたけど…
 先生も有名人になってきたから大変ですねぇ」
 
「そんなぁ、有名人なんてぇ」

「でもぉ、今や、県内のバスケット関係の親御さんから、関係者まで美紀谷先生のことを知らない人はいないくらいですよぉ」
 と、そう云ってきたのである。

「そんなぁ…」
 と、そこで会話は終わったのだが、その言葉は正に青天の霹靂であったのだ。

 県内のバスケット関係は…か。

 確かにそうかもしれない、高校バスケットの決勝リーグの観客数は県内で一番大きなアリーナを満席にしてしまうのだ。
 そして決勝リーグ戦や、決勝戦は、そんな大きなアリーナ会場の4面取れるコートを一つにして行われるのである。

 だから注目度はかなりのモノなのだ…

 


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