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雨の降る夜は傍にいて…
第6章 小夜時雨(さよしぐれ)…
 15 最後の刻

「……別れ…る…って…な…んで……」

 そう返すのが精一杯であった。
 

「え、あ……分かるだろう…」
 浩司は呟いてくる。


「…な、なんで…、分からないわ……」
 わたしは、必死の、無駄な抵抗を試みる。
 しかし、わたしがそう言うと、浩司は困惑の顔をしてきた。


 そしてわたしは足掻き、抗う…

「だって…
 だって…
 今まで、何の問題もなく…
 何のトラブルもなく…
 何も起こらず…
 もう3年よ…
 3年も仲良く、うまく、愛し合ってきたじゃない…」

 理由は分かっていた…

「これからだって…
 きっと…
 ううん、絶対にうまくいくわ…
 いかせてみせるし…」

 無駄な抗いなのは分かっている…

 ただわたしは現実から逃避していたのだ…
 
 逃げていた…

 避けていた…

 考えないようにしていた…のだ。

「うん…、だけど…さ」

「えっ、だけど……なに?」

「だけどさ……」
 浩司はそう言って、わたしの顔を、目を、ジッと見つめてくる。

 ああ、分かっている…

 分かっている、云わないで…

 分かっている、聞きたくない…



「だけど…
 万が一が………さ…」

 万が一があったらさ、取り返しのつかない事になってしまう……
 そうだろう…

 そう、浩司は云ってきたのだ。

「俺もそうだけど…、ゆり、お前の失うモノの方が…」
 計り知れなないくらいに……
 大きい……
 と、彼は言い放つ。

「…………………」

 わたしは返す言葉が無かった。
 そして涙が溢れ、とめどもなく流れ落ちていく。

 とうとうこの現実を突き付けられる運命の刻が来たのだ…

 だけど…

 だけど、なぜに…

 なぜに今夜なのか…

 

 まだ…

 もっと後でも…

 今夜じゃなくても…


 もう終わり……ということなのか…







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