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雨の降る夜は傍にいて…
第6章 小夜時雨(さよしぐれ)…
 34 別れの夜 ⑪

「だって…
 だって…
 別れたくないんだもん…ひ、ひん…」
 わたしは嗚咽する。

 するとそっと浩司がわたしの肩を抱いてきた、そして彼の優しさの動きに、その想いに、心が揺れ、震え、更に号泣し、激しく嗚咽をする。

「ひ、ひん…うっ…え、ええ……ん…」

 涙が止まらない…

 やっぱり…

 やはり…

 別れたくない…


「…ゆ、ゆり……」
 すると彼は、そんな嗚咽し、号泣するわたしのカラダを更に強く抱き締めてきた。
 だが優しくされればされる程に、嗚咽と涙は次から次へと溢れかえってしまう。

「ひ、ひん…ひ…え、ええ……ん…」
 そしてわたしはそのまま約10分近く、彼に抱き締められながら嗚咽をし、号泣する。

 やっぱり…

 別れたくない…

 やっぱり…

 全部捨てて…

 捨てて、別れない…


 別れない…



 
 だが…

 そうは言えなかった…

 全部は捨てられない…のだ。

 所詮、自分がかわいいのだ…

 全てを捨てて彼の、浩司の女であり続ける…

 それは出来ないのだ…

 そうしようとは心の底からは思えないのである。

 もちろん何度もそれは考えた…

 でも、決断は、決心は、出来なかった…のだ。

 保身…なのである。

 結局は自分がいちばんかわいいのだ…

 今までのように浩司と不倫関係を続けて、そして教師も、バスケット指導者も続けていく、いや、続けたい。

 別れたくない…

 教師、指導者も続けたい…

 この思いの平行線しか考えられないのである。

 だから、結局、答えは…

 別れ…しかないのである。

 所詮、この涙も…

 そんなわたしの『偽善』『欺瞞』そして『甘え』の涙なのである。

 そう、わたしは結局、ズルいのだ…


 



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