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雨の降る夜は傍にいて…
第6章 小夜時雨(さよしぐれ)…
 35 別れの夜 ⑫

 だから、結局、答えは…

 別れ…しかないのである。

 所詮、この涙も…

 そんなわたしの『偽善』『欺瞞』そして『甘え』の涙なのである。

 そう、わたしは結局、ズルいのだ…

 心のどこか、そう奥深くに
『泣けば…なんとかなるかも…』
 という、甘えの思いが隠れているのを実は、自覚していたのである。

 こうして泣いて、泣き続けていけば、浩司が、見るに見かねて
『やっぱり別れるのを止めるか…』

『別れるのを止めて、今までよりももっともっと周りの目を注意して続けていくか…』
 と、言ってくれる事を期待している自分がいるのだ。

 偽善、欺瞞、甘え…なのだ。


 だが…

 だが…

 こうしてずっと泣いて、嗚咽して、なきじゃくっていても…

 こうして抱き締めてくれていても…

 彼は、浩司は無言であった…のだ。

 何も言っては、いや、言葉をくれなかった。

「………………」
 ただ、ただ、彼は、こうして無言で、肩を抱き、頭を撫でてくれているだけであったのだ。

「ひっ、ひっく、ひん……」
 ようやく嗚咽が収まってきていた。
 そしてわたしは更に甘え、キスが、彼の唇が欲しくてぐしゃぐしゃの顔を上げ、彼を見つめる。

 あ…

 浩司の目が…

 目が…

 泣いている…

 涙は溢れてはいないのだが、まるで泣いた様な、哀しい目をしていたのだ。

 ああ…

 そうか…

 そうか…

 浩司もわたしと同じ想いなんだ…

 だからこそ、黙っているんだ…

 言葉にしたら…

 口を開いたら…

 声を出したら…

 別れたくない…って言ってしまうから。

 そうに…

 いや、そうだ…

 浩司もわたしと同じ想いなんだ…

 そうに違いない…



 わたしはそう想い、確信する。

 いや、違うのだ…

 そう思わなくちゃ…

 そう想う事しか…

 自分のこの悲しみが、哀しみから、救われないから…

 


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