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雨の降る夜は傍にいて…
第6章 小夜時雨(さよしぐれ)…
 39 別れの朝 ①

 浩司は人としての大きさが違うのだ…


「うん……わかった…」
 わたしはそう応える。
 
 もう足掻かない…

 これ以上、彼を…

 浩司を…

 苦しめたくはない…

「…………」
 すると再び浩司は無言でわたしを更にきつく抱き締めて、更に激しいキスをしてきたのだ。

 そのキスはまるで、彼の熱い想いを激流の如くにわたしの中に唇を通して流し込んできたのである。

 ああ…

 心もカラダも、その彼の熱さに触れ、そして震え、蕩けていく。

「…ねぇ、朝まで抱き締めて…」
 わたしはそう囁いた。

「ああ…」
 彼はそう頷き、わたしを抱き締めてくる。
 そしてわたしは朝まで彼の腕の中で眠りについた。
 
 こんな激しく揺れ動いたこの別れの夜はとても眠れないと思っていた…
 の、だが、この約10日間のウインターカップという全国大会から続いての合宿の日々と、この彼との別れを控えた精神的な想いにかなり疲れ、疲弊していたのであったのだ。

 そして彼の優しさと想い、思いやりに触れ、心が落ち着き、和み、緩み、それに抱き締められた温かさに蕩ける様に、あっという間に、そう、彼の存在感を噛み締める余裕もなく寝落ちしてしまい、更に熟睡までしてしまったのである。




「……………んっ、はっ…」

 あっ…

 寝てしまった…のかっ…

 えっ…

 わたしは目覚め、一瞬にして記憶を蘇らせ、慌てて飛び起きる。

 あっ…いない…

 いない…

 横に寝ている筈の浩司がいないのだ。

 あっ…

 えっ…

 わたしは彼がベッドに居ないという事に、パニック状態になってしまう。

 なぜ…

 えっ…

 あっ…

 まさか…

 帰ってしまったのか…

 慌てて時計を確認する。

 午前8時35分…

 ああ、わたしは…

 約5時間近く熟睡してしまった…

 ああ…

 浩司…

 帰ってしまった…

 わたしは激しい焦燥感と絶望感に一気に襲われていく。

 なんで…

 寝ちゃたの…

 最後の…

 別れの…

 夜なのに…

 その時であった。

 ガチャ…

 リビングルームのドアの開く音が聞こえ、そして寝室のドアが開いた。

「あっ…」

「なんて顔してんだよ…」

 ああ、浩司…

 浩司は居たのだ…







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