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雨の降る夜は傍にいて…
第2章 春雷
 14 始業式

「それでは新任される三人の先生を紹介します…」

 四月、新学期が始まり最初の、退屈な始業式の時であった。
 
 ああ、眠いや…
 今日から新学期が始まり、つまりは朝練も始まった訳で、今朝からは毎朝五時起床の生活が始まったのだ。
 そして案の定、既に俺にこの退屈な始業式で眠気が襲ってきていたのである。

「……続いて特進クラスの体育を担当します、美紀谷ゆり先生です…
 あと、美紀谷先生には女子バスケットボールの顧問もしてもらいます…」

 えっ、バスケットボール部…

 美紀谷ゆり先生って…

 半ば居眠りをしていた俺の脳裏に突然、教頭による、懐かしい名前が入ってきた。
 そして俺は慌てて顔を上げる。

 あっ…
 
 ドキドキ…

 急に胸が昂ぶってくる。

 あっ…

 ゆ、ゆり姉ちゃん…だ……

 ゆり姉ちゃん…

 7年前に死んだ兄貴の元彼女のゆり姉ちゃんだ…

 そのゆり姉ちゃんが講堂の壇上に、新任教員として紹介されて立っていたのである。
 それは予想だにしなかった懐かしい顔、そして名前である。
 
 ドキドキ、ザワザワ…
 胸が激しく昂ぶり、そして騒ついてきていた。

 間違いない、ゆり姉ちゃんだ…

 そして寝ぼけていた思考が急激に覚醒し、7年前の、あの毎週水曜日の夜の、兄貴との秘密の逢瀬の、あの喘ぎ声が、姿が、脳裏に蘇ってきていたのだ。
 
 ズキン、ズキズキ…
 そして俺の下半身も急激に疼きを昂ぶらせてきた。

 俺の性嗜好の憧れの対象…

 全てのきっかけの…

 ゆり姉ちゃんが、突然、目の前に現れた…


 兄貴…

 兄貴が呼び寄せたのか…

 俺はこの不思議な巡り合わせの興奮に、すっかり眠気が醒め、目の前のゆり姉ちゃんから目が離せなくなっていたのである。

 ズキズキ、ザワザワ、ドキドキ…

 興奮の昂ぶりが更に増してきていた。




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