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雨の降る夜は傍にいて…
第2章 春雷
 15 接近遭遇大作戦

「今日は体育館の室内練習に変更です…」
 午後三時頃から急に春雷と共に降ってきた豪雨により、練習メニューが変更になったと、女子マネージャーが伝えに来た。

 西に県境である山々を抱えるこの土地は、こうした季節の変わり目には、頻繁に雷雲や、雷雨が発生する。
 そして今日も、昼間の急激な温度上昇により、春雷が発生したのであった。


 体育館か…
 我が野球部の雨天時の室内練習は、女子バスケットボール部が専用的に使用している第2体育館を使用する。

 さっそくゆり姉ちゃんと接触できるか…

 俺はそう思った瞬間に、また、再び、せっかく治まっていた興奮の昂ぶりが騒ついてきてしまう。

 なんて声を掛けようか…

 いや、果たして俺の事を覚えているのだろうか…

 あの7年前は小学4年生、10歳だった…

 今とは全く違う児童だったのだ…
 俺は色々と逡巡をしてしまう。

 だが、そんな逡巡は杞憂で終わってしまったのである、室内練習中、全くゆり姉ちゃんとは遭遇しなかった、遠くでチラっと見掛けただけであったのだ。

 そうだ、体育の授業があった…
 だが、その体育の授業も明日からの春の県大会で欠席になってしまう。

 ま、いいか、焦るな…

 どっちみち、その内に会える、いや、接近遭遇できる。

 なんせゆり姉ちゃんは教師、そしてバスケットボール部顧問のヘッドコーチなのだから…

 そして俺は心を落ち着けて、ゆっくりと、ゆり姉ちゃん接近遭遇の作戦を練っていったのだ。

 自然に、そして感動的な再会をする…
 
 悔しいけれど兄貴という存在感を利用して、懐古、回顧させる…

 そしてその懐古、回顧の想いの隙間を突く…

 これが俺の、憧れていたゆり姉ちゃん接近遭遇大作戦である。

 そしてその先に…

 憧憬の想いのその先に…

 儚い期待が昂ぶっていたのだ。


 


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