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雨の降る夜は傍にいて…
第2章 春雷
 30 欲情のスイッチ

「ね、ねえ、どっち…なの…」

 わたしは抱き締められながら、思わずそう呟いた。

「ただし…だよ…」

 ゴロゴロゴロゴロ…

 再びすぐ近くで春雷の雷鳴が鳴り響く。

「たーちゃん…なの…」

 すると、返事の代わりに強く抱き締めてくる。

 ああ…

 たーちゃん…

 ただし…

 願わくば、本当に、本当に、蘇ってきて欲しい…

 例え、幽霊であってももう一度…

 もう一度だけでいいから…

 逢いたい…

「ゆ、ゆり…」

「ああ、た、たーちゃん…」

 わたし達は再び、口吻を交わしていく。

 ああ…

 たーちゃん…

 激しく舌を絡め合い、唾液を交わしていく。
 そして、更に強く抱き締めながら、わたしを管理室のソファーへと倒してきたのだ。

「ああ…」
 わたしは心が震え、カラダの力が抜けてしまっていた。

 ブツンっ…

 その時、再び、停電した。
 目の前が真っ暗になる。

 ゴロゴロゴロゴロ、ズズーン…

 落雷の地響きと、稲光の光りが一瞬だけわたし達を、いや、目の前を照らしたのだ。

「あっ…」

 稲光に一瞬、照らし出されたのは、紛れもない、たーちゃん、ただしであった。

 ああ、たーちゃんだ…

 そしてぎこちない手が、わたしの胸をまさぐってきて、Tシャツの中に入ってきたのだ。

「い、痛っ…」
 手の平のマメががさがさして痛かった。

 ああ、たーちゃんの手だ…

 太腿に硬い、熱い、脈打つモノが当たってきた。

 ゴロゴロゴロゴロ…

「ゆり…」

 わたしはその声で、欲情のスイッチが入ってしまう。

「はぁ、たーちゃん、ううん、啓ちゃん…」
 そのわたしの呟きに、ただしになり切っていた啓介くんがビクッとカラダを震わせた。

「わかったから…離して…」

「う、うん…」

 わたしがそう云うと、抱き締め、Tシャツの中に入り込み、ブラジャーの上から胸をまさぐっていた手がスッと離れていく。

「啓ちゃん、わかったから…
 ここは体育館の管理室だから…
 ここは出ましょうよ…」

「あ、う、うん…」

 わたしは覚悟を決めた、いや、すっかり欲情し、その欲情の昂ぶりに思考は命令されていたのだ。

「させて…あげる…から…」 

「ゆ、ゆり姉ちゃん…」





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