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雨の降る夜は傍にいて…
第2章 春雷
 53 手と指と口と唇…

 よし、仕方ない…

 わたしと啓ちゃん、二人の抱えている想いに、微妙に、違いはあるけれど…

 二人でこれを、この山を乗り越えなくては、今夜の、この禁断の逢瀬が、ムダになってしまう…

「やっぱり…そうよね…」
 わたしは呟く。

「気に………なるわよねぇ…」
 更に呟く。

「ふうぅぅ…」

 よしっ…

 わたしは啓ちゃんのチンポを抜いて、態勢をズラし、お互いに正面を向く姿勢になった。

「啓ちゃん……あのさ…」

「あ、は、はい…」

「わたしと、たーちゃんは……」

「うん…」

「して……ないの…」

「えっ…」
 驚いた顔をする。

「してなかったの……」

「えっ…」

「ううん、正確にはしようと約束してた…かな…」

「えっ、そ、い、いや、なんで…」
 啓ちゃんはかなり驚いた顔をしている。
 まるで、意味がわからない…
 そんな顔であった。

「だ、だって…毎週水曜日に……」

 やはり、啓ちゃんにはバレていたか…

 声が、喘ぎ声が、聞こえていたか…

「ごめんね…」
 これは、7年前の喘ぎ声を聞かせて興奮させてしまったであろう事への謝罪であった。

「あのね…わたし達はシテはなかったの…」

「え、だ、だって…」

「うん、あの喘ぎ声はね…」
 わたしとたーちゃんは、まだ手と指、口と唇、でしかシた事しかなかったのよ…

「えっ…」

 啓ちゃんはかなり驚いた顔をしてくる。
 そして、必死に頭の中で、今、わたしの云った意味を整理しているようであったのだ。

「えっ、じ、じゃあ…」

「うん、スる約束はしたんだけど、その前に死んじゃったの…」
 
「そ、そんな…」
 ようやくわたしの言葉の意味を理解したようである。

「そうなのよ…」

「そ、そうなんだ………」
 そして、完全に理解したようである、そして、そのわたしの言葉の裏に隠された意味をも理解したようであった。

 さすが、特進クラスだわ、理解が速い…

「そ、そうか…そうなんだ…」
 そして、すっかり理解した顔で、目で、わたしを、見つめてきたのである。

「うん…」

「…………」

「だから啓ちゃんは………
 もう、とっくに…」







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