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雨の降る夜は傍にいて…
第2章 春雷
 63 追伸…


 この夜からわたし美紀谷ゆりと、木村啓介くんの毎週水曜日の夜の逢瀬が始まったのである。

 但し、この関係は、啓ちゃんが高校の野球部を引退するまで、つまりは、甲子園の県大会予選が終わった時点まで、もしくは甲子園に出場できたならば終わるまで、更に追加条項として、仮に全日本選抜等に選抜されたならば終了まで、と、高校野球選手が終わる迄との約束をした。
 だが、追加条項は残念ながら杞憂となり、県大会準決勝で敗退してしまい、その夜で綺麗にわたし達二人の高校教師と高校生という禁断の関係は終止符を打ったのである。
 だが、わたし達二人の間には禁断という想いはなかった。
 そして啓ちゃんには絶対に秘密を通したのだが、わたしには最後の夜まで啓ちゃんを通してただしの姿を透かして見てしまっていたのである。
 だが、決して口には出さなかったのだが、多分、啓ちゃんもそんなわたしの想いには気付いていたような感じが、今となってはしてくるのであった。

 多分、啓ちゃんの方がある意味わたしより大人だったのかもしれない…

 そしてあの夜以降の啓ちゃんは、やはり昔のただしと同じように性春のエネルギーの爆発的な解放によりすっかり吹っ切れ、そして男性ホルモンの刺激からの活性により、カラダも、精神的にも一回り以上に大きくなり、高校野球選手としては県内いや、関東地区でも有数な優秀選手として成長を遂げたのである。

 これはわたしの悦びでもあった…

「ねぇ啓ちゃん、進路はどうするの?」
 最後の夜にわたしは問うた。

「東京六大学リーグでやりたいんだけど、甲子園組にはなかなか勝てないから…
 頑張って勉強して、東大入学して野球続けようと考えてるんだ…」
 
 そしてそれは有言実行をしたのだ。
 一浪はしたのだが、なんとか東大に入学をし、東京六大学リーグでの異色の東大選手として四年間大活躍をして、六大学リーグの何かの記録に名前を残す選手となったのである。

 今は東大を卒業し、某一流企業に就職し、活躍していると訊いている…

 それは、一人の男の子の、大人の男への成長に関われた悦び、喜びでもあるのだ。


 春先の…

 春雷が鳴り響くと、わたしはこれらを思い出す…

 そしてわたしにとっても、最後の青春の思い出ともいえるのである。

      
      追伸 終わり…





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