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甘い蜜は今日もどこかで
第5章 【もし間に合うのなら】
ねぇ、少しは妬いたの?
言っとくけどこの3日間はこんなのばっかだよ?
初日でコレじゃ、次のシーンでも本当にキスしちゃうんだろうな。
まるでそこだけが違う空気になって、
甘酸っぱくて優しい雰囲気になる。
本当の恋人同士に一瞬でなれたの。
まんまと持ってかれた。
ジロウの前で本気で恋した女になってるつもりだけど、今まで散々レンカノやレン妻で見せてきたからな。
免疫ついてるかも知れないけど、妬いてくれるくらいの収穫があれば良いな。
「お疲れ様でした、どうでした?DAiKIさんとの撮影は」って目をキラキラさせて次のメイクに入るヘアメイクさん。
「色々と……凄かったです、目の配り方とか……仕草とか」
「ですよね、ですよね!あんな至近距離でDAiKIさんと目が合うなんて心臓大丈夫でした?ていうかキスシーン!遠くからしか見れなかったですけどめちゃくちゃ良かったです!」
思いきりいいねポーズされて苦笑い。
相当ファンなんだろうな。
スタッフさんや周りの人たちからは、アレはフェイクだと思われてるのかな?
いや、撮ってるカメラマンさんはわかってるはず。
モニターチェックしているスタッフさんだって間近で見てたんだから。
吉原さんは早速DAiKIさんと話し込んでいてヘアメイクが終わったら私とジロウの2人きりになってしまった。
「えっと、ホテル何時にチェックインだったっけ?」などと今話さなくても良い話題を振ってしまう。
「撮影が終わり次第向かうのでその時に連絡する流れになっています」って真面目に答えてくる。
そっか、で即会話終了。
どうすんの、コレ。
ジロウからは絶対話しかけてもこないだろうし、仕方なくスマホを触る。
「つーちゃん、これからまた次のシーン打ち合わせしたいんだけど休憩挟んだら此処に集合でも良い?」
撮影で借りてるペンションでDAiKIさんと打ち合わせ。
周りにちらほらスタッフさんは散らばっているけど、一応自由時間ではあるが「恋人同士だからなるべく一緒に居たい、ご飯も一緒に食べよう」って言ってきた。
せっかく築いた関係性を休憩時間でリセットされたくないという気持ちは理解出来る。
「休憩もご一緒して良いんですか?」