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甘い蜜は今日もどこかで
第5章 【もし間に合うのなら】
ここで取り乱す訳にはいかない。
それを知った上でアドリブ入れてきてるのなら、きっと私は試されているのね。
このキスが終わった後にどんな反応を見せてくるのか。
撮影が止まってしまうのか、
私の表情が使えるのかどうか。
挑戦状だと思っても良い…?
俄然、やる気出てきたんだけど。
途中、舌まで入ってきた。
入り口だけ。
拒まない、付き合ってるテイだから。
それより、感じないと。
好きな人とのキスってきっとこんな感じ。
ジロウ………ごめんね。
DAiKIさんに今だけは夢中にならないといけないみたい。
顔は映らないとわかっていても、この創り上げてきた雰囲気を壊さないように私なりに精一杯応えたいと思う。
唇がゆっくりと離れていく。
耳を触られ、額をくっつけて。
頬を包むDAiKIさんの手に手を重ねて
優しく微笑むの。
まだ欲しそうな唇を映してもらう。
ギュッと抱きしめ合って数秒後。
「カット!」の声にパッと離れる2人。
今の今までキスしてたのに余韻は自分たちで消す。
カットがかかれば俳優同士。
バイバイした後のレンカノみたい。
その辺もプロになっちゃうとリアルな時にどうすれば良いのかわからなくなるんだけどね。
きっとそれは、DAiKIさんも同じじゃないかな。
「勝手なことしてごめん」
素に戻れば気難しそうな顔をして真面目に謝ってくるDAiKIさんに怒れなくなっちゃうし、作品に対する本気度が垣間見れてこちらも背筋がピンとなる。
「ちょっとびっくりしましたけど、プロですね、負けてられないって思いました、良い作品になれるようもっと頑張りますね、私」
思っていた反応と違ったのか、ポカンと口が開いている。
すかさずヘアメイクさんが髪を直してきたりと周りのスタッフに囲まれちゃって会話はここで終わり。
吉原さんが来て
「何なの〜今の!超良い感じで撮れてたじゃん!」って興奮気味に話してくる。
その後ろで真顔なジロウはどうリアクションすれば良いのかわかってないみたいで顔が強張ってる。