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甘い蜜は今日もどこかで
第5章 【もし間に合うのなら】
「髪……乾かせますか?シャワー浴びながら寝ないでくださいよ?心配なんで、僕の部屋におやすみコールしてもらっても良いですか?」
「はいはい、バイバイ、シャワー浴びるからほら、行った行った」
手でシッシ…と払ったらペコリと頭を下げて出て行った。
冷たい態度だってわかってる。
でもこうでもしないと甘えちゃうから。
ドアの前で立ち止まるジロウにどうしたの?って聞く前に振り返ったと思ったら近付いてきて頬を両手で包み込まれた。
えっ…!?
急に何なの!?
ジロウにしては思いきった行動。
唇……?なに……!?
親指で唇を擦ってくる。
「痛い……痛いよ」
びっくりして見上げると私は一瞬にして固まってしまう。
なんて顔してるのよ。
今にも泣きそうで食いしばってて。
「ジロウ、そんなに嫌ならちゃんと意思表示して」
もう反論出来ない…?
また諦める?
あと2日あるけど指咥えて見てる?
私にどうして欲しいの?
そんな顔して、私が動くの待ってるつもり?
もう私からは動かないよ。
今必死になって足掻いてくれても、明日の撮影には何の影響もないのよ。
わかってて行動してるのよね?
「僕が何とも思わないで見てたと思ってますか?僕が居るから頑張れるって、あんなことする為に送り出した訳じゃない…!」
「それが私の仕事でしょ?何回レンカノレン妻見てきてるのよ、同じでしょ?」
「同じじゃない…!ココに触れてた…僕じゃないのが…っ」
「だから…?私は仕事を全うしただけだよ?それに、私とジロウはキャストとマネージャーの関係なはずでしょ?自分から破っちゃうの?そんな度胸あったんだ?」
「…………っ!」
触れていた手を下ろしてあげたら
「消毒しても良いですか」って熱い視線で瞬時に私を動けなくする。
ゆっくり顔が近付いてきた。
え、ちょっと待って、心臓ヤバい。
素の状態でコレは想定外だから。
寸止め、だよね?
ヘタレで終わるよね?
パフッ…とジロウの口を手で覆ったのは私。
一線越えないって言ったじゃん。
酔ってるでしょ。
そんな時にこんなのされたくない。
「頭冷やして、自分が何やってるかわかってる?」