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甘い蜜は今日もどこかで
第5章 【もし間に合うのなら】





「私がリードするやつなら」
「じゃ、それで良い」
「絶対に仕掛けてこないで」
「わかった」
「私が引いたらそれで終わり」
「了解」




アドリブが多いな…とは感じていたけど、やっぱこうなるよね。
モニターにはどう映るかちょっと想像出来ない。
ただ、ちゃんと隠れる位置でなければ。
だから、私がカメラに向かって背を向けた。




完全なるアドリブ。
しかも私から。
スタッフも吉原さんたちもびっくりさせちゃったかも知れない。




髪に触れて、耳に触れて、襲いかかるような熱いキス。
舌は入れないよ。
カメラに映ってないところだし。
腰や背中にDAiKIさんの手が触れてくる。
カメラが慌てて回ってきたか。
そのタイミングでDAiKIさんの舌が入ってきた。




少しだけ絡めて下唇を甘噛みして離れた。
終わり、の合図………だったのに。
「まだ頂戴」って重ねてくる。
天蓋ベッドの上で膝立ちし、キスしてる。




いつまで撮る……?
離れてはくっついて…を繰り返す。
完全に煽ってきてる。
アドリブだからカットが掛からない。
甘噛み返ししてくる。
額をくっつけて笑い合った。
笑い合ってベットに倒れた。
お願い、カット掛けて。
もう顔映っちゃってるでしょ。




「カット!!」




その声に慌ててスタッフが動き回る。
カットを掛けたのはスタッフじゃない。
私にはすぐわかった。
間一髪でジロウの声がした。
叫んだのはジロウ。
吉原さんに怒られてる。




その吉原さんの元にスタッフが。
何やら話しているけど首を横に振ってる。
今のダメだったのかな。
使えなかったかな。
やり損じゃん。




「つーちゃん大胆……でも嬉しかった」




隣で寝転びながら足をバタつかせ喜んでいるDAiKIさんに、呆れつつ笑顔。




「ほら、アドリブばっかだからザワついてるよ」




「うん、まだもうちょっと撮影してたい……つーちゃんと一緒に居る時間が伸びるからそっちの方が好都合なんだけど」




「望むところよ、アドリブ対応は慣れてるの」




「どんな顔のつーちゃんでも俺はキュンとくるけどね」




あ………何か今一瞬思ったけど、こういうところあの副社長に似てる。
何でこう、上層階級の人間は自信たっぷりなんだろうね。









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