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甘い蜜は今日もどこかで
第5章 【もし間に合うのなら】
敢えて周りは見ない。
熱が冷めちゃうから。
DAiKIさんだけを見て目で会話する。
誰もが羨むくらいの空気感で。
ショートケーキの生クリームを唇にわざとつけてそれを舌で舐め取る。
次第に深くなっていくギリギリのところでぼやかす予定だったけど。
モニターではぼやかしていてOKが出てるのにやめないDAiKIさんに肩トントンで知らせる。
スタッフもアタフタしてるのがやっと本人にも伝わったみたいで真っ赤になって「ごめん」と言われた。
顔が元に戻るまで少しの時間を要した。
憑依し過ぎたのかな。
演技とはいえ、舌が絡み過ぎて危ないところだった。
ぎこちなくはなりたくないので恋人関係のまま接した。
私は大丈夫、次のシーンも全力で頑張りますって伝えたけど少し熱っぽい視線が残ったままのベットシーンへ。
ただ、ベットの上でイチャイチャするだけのシーンです。
クッション投げ合ったりバックハグでじゃれたりするだけ。
髪にキスしたり肩、首に唇を這わせたり。
際どい演出もかなり好評なアーティストさんだからこれくらいは当たり前なのよね。
上半身裸のDAiKIさんに抱き着いたり、私も首にキスしなければならない。
このシーンのどれかを歌詞カードの表紙にするみたい。
モノクロで。
何百枚という数のシャッターを切られるけど意識しちゃいけない。
あくまでも日常のひとコマでなければ。
何度も顔を近付けてキスしそうでしない演出。
天蓋ベッドだから上手く顔が隠れる位置でキスしてる雰囲気を醸し出す。
「本気のやつしても良い?」
演技の途中でDAiKIさんの方から言ってきた。
まるで内緒話してるみたいに耳元で囁く。
嬉しそうにしてなきゃ、だよね。
こうならなくはない……と踏んでいたが。
これも戯れてる雰囲気。
「ダーメ、その辺の女と一緒にしないで」
しっかり断りつつイチャイチャは続行。
何を話しているかなんてスタッフにはわからないんだから。
それを上手く使って落とそうたってそうはいかないわよって教えておいた。
優しく笑いながら「したい」って髪を耳に掛けてくる。
「お願い」と目を潤わせて。
だから仕方なく。