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甘い蜜は今日もどこかで
第1章 【本当は嫌なのに】
「申し訳ございません、就業時間以外は特例がない限り規定違反になりますので」
「特例って!?」
びっくりする。
大きな声出さないでよ。
特例って……いわゆる吉原さんがOKとする行為だよ。
そんなの言えるわけないでしょ。
「えっと、それはまだ私もよく聞かされてなくて……あの、全て業務連絡で会社に報告しなければならないのでプライベートでの接触は全て規定違反です」
「うっ………わかった」
わかりやすい人。
自分の意思関係なく副社長というナンバー2にのこのこと抜擢されて、どんなボンボンがやって来たのかと思ったら意外に何処にでも居そうな男なのね。
おまけに秘書として雇うわ、いきなり口説いてくるわでどうなることやら。
これで仕事全然ダメなら吉原さんにもう一度掛け合ってみよう。
そう思っていたのに。
何日も同じ空間で一緒に過ごすうちに、阿吽の呼吸で副社長の意思が汲めるようになってきて。
何度か社外での打ち合わせにも同行し仕事ぶりを見てきた。
多少強引なところもあるが決断力はある。
だからスムーズに片付いている気がする。
朝から移動ばかりでやっと社に戻ってきたのは午後3時。
夕方に1件アポとスポンサーとの会食がある。
帰社してすぐに私は頭痛薬をお出しした。
「途中でずっと辛かったんじゃないですか?次のアポまでゆっくりなさってください、起こしに来ますので」
「此処に居てくれ」
「えっ!?」
こっちの気も知らないでソファーで膝枕させられた。
意外とこういう俺様気質な行動に免疫がない私。
いつもはこっちから仕掛けてばかりだったから不意打ちに弱い。
しまった……しっかりしなければ。
手に持っていたタブレットで再来週のスケジュールも確認しておこうか…と思ったけど取り上げられてしまう。
「藤堂も休め、俺が許す」
「は、はぁ……あ、はい、ありがとうございます」
副社長室に2人きり。
暫し睡眠を取られた寝顔を見ながら全然休めない…と心の中で愚痴をこぼした。
1件のアポを終わらせて退社時刻が迫っているにも拘らず、今日はあまり体調が思わしくないみたいだ。
「あの、会食は延期になされた方が…」