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甘い蜜は今日もどこかで
第1章 【本当は嫌なのに】





「副社長に遅いよジロウって言ってましたよ?」




「ヤバっ!!ちょっと待って、これは……覚えてないテイで進めるわ、朝一で謝っておく」




何よ、あの後すぐ解散してたんじゃないの!?
何でジロウが来るまで一緒に居るの!?
ジロウだと思って甘えてみたのに。
よりによって副社長に醜態を晒すなんて。




大丈夫、まだ挽回出来る範囲内よ。
どこまで追求してくるかわからないけど顔色ひとつ変えないで切り抜けるテクはピカイチなの。
こんなことばかり得意になっても仕方ないんだけど。




今日を切り抜ければ明日は休みだ。
最後まで気を抜かないでしっかり業務を全うしよう。
スイッチの入った私にもう何を言っても無駄だと知っているジロウは快く私を送り出してくれる。




一応、吉原さんには逐一細かく報告はしている。
気が乗らないが始末書扱いだな、昨日の件は。




会社に着いてすぐに私は硬直してしまう。
何故か、もう副社長は出社されていたのだ。




「お、おはようございます、副社長、もういらしたんですね」




「気になってあまり眠れなかった」




「え?」




「わかってるさ、キミは俺の秘書であり、それ以上でもそれ以下でもないってことくらい」




「はい、ですが、昨日はすみませんでした……終わった途端に気が抜けてしまったんだと思います、プロ失格の行為でした、申し訳ありません」




「いや、キミはプロそのものだったよ、とても褒めていたそうだ、優秀な秘書だと」




「光栄です、あ、珈琲お持ち致しますね」




「いや、後で良い、1つだけ聞かせてくれ……昨日の男とはどういった関係なの?」




「え……?プライベートのことなのでお答えし兼ねます、業務以外は禁止されていますので」




セクハラモラハラに該当しなければ大丈夫なのだろうけどここではタブーとしよう。
そんな悲しそうな顔で見つめないでください。




「ジロウ…だとか言ってたかな?かなり気を許した仲なんだな、初めてキミのあんな顔を見たよ、彼にも言われた」




え……!?なにを……!?
聞きたいけど業務以外の会話になるから聞くに聞けない。
私を試してる?








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