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甘い蜜は今日もどこかで
第8章 【ずっといつまでも】





15分程度経っただろうか。
ICUからお母様とお姉さんが出てきた。




「うん、大丈夫みたいです、ちゃんと喋れましたし、今は痛み止めでうつらうつらしてますがいつもの息子でした」




そう聞いて心底ホッとした。
説明によると、悪い皮膚を剥がす為に麻酔を打ってシャワーしていたらしい。
新しい皮膚を再生する為に今はとにかく高カロリーのものを食べて絶対安静。
火傷範囲は顔、耳、首、右腕、背中。
意識あり。
痛み止めは必須だが、包帯取る時が一番痛いんだとか。




ジロウ大丈夫かな?
泣いてないかな?
会いたい。
どんな状態で居るの?
どんな表情してるの?
いつ一般病棟に移れるの?




ねぇ、話したい事たくさんあるよ。
今、めちゃくちゃ辛い。
ジロウに会えないのが死ぬほど辛いの。




お母様とお姉さんに最後、ろくに挨拶も出来ないまま帰って行ってしまった。
また来ると言っていたらしい。




「椿、もう此処に居ても意味がないから一旦帰りましょう」




吉原さんにそう促されてもその場から動けなかった。




「意味なくない……会いたい……ジロウに会いたいよ……」




子供みたいに泣いた。
ワンワン声を上げて。
煩かったと思う。
良かった……助かっただけで良かったんだって必死に言い聞かせて。




「帰るよ」と言われても「嫌だ」と駄々をこねる。
離れたくない。
本気で朝まで此処に居ようと思った。
我儘な私に吉原さんは両手で頬を挟むように叩いてきた。




「藤堂椿!!しっかりしなさい!!」




「うっ……うっ………ふぇーん……ヒック…ヒック」




「ジロウだって必死に頑張ってる!あんたに会う為に!明後日からまた秘書しなきゃでしょ!ジロウの為にあんたも食いしばって頑張りな!メソメソ泣いてたってジロウ喜ばないよ!プロの意地、見せつけてやんなさいよ!」




「ジロウが居なきゃダメだもぉ……ん……うぐっ……グスっ」




泣きながら吉原さんに連れて行かれた。
「明日もお母様来られるみたいだから面会頼んでみたら?」と言われても涙は引っ込まなかった。




「あんたがそんな泣き虫だったとはね」




呆れられても良い。
ジロウ……遠くからでもひと目見たいよ。
ジロウの声で「大丈夫だよ」って聞きたい。








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