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甘い蜜は今日もどこかで
第8章 【ずっといつまでも】
重い身体を引きずり自宅へ戻る。
幸い明日は休みで何もない。
面会時間は昼の2時からだった。
真っ先に行こう。
命に別条はなくて本当に良かった。
それだけが唯一の救い。
会える……もう少ししたら会えるんだ。
ジロウ………今、何考えてる……?
あんたが助けた子、軽い火傷で済んだんだって。
親が感謝してたよ。
小さい子見て放っておけなかったんだよね。
幸い、喉まで火傷は広がっていなかった。
右側に避けたらしく火傷が酷いみたい。
火傷について色々調べた。
神経に達していると皮膚の再生は難しい。
手術は免れない。
綺麗に跡が残らない確率は低い。
酷い火傷の画像等を見て一瞬、目を逸らしてしまった。
ううん、大丈夫。
もしジロウがそうでも、私は全部受け入れるんだ。
僅かにまだ震えが残ってる。
明日、会えますように。
じゃなきゃ、もう頑張れない。
最後に見た作り笑いの「行ってらっしゃい」じゃ悲し過ぎるよ。
止め処なく流れる涙に嗚咽も止まらない。
咽び泣く。
いつ寝たのかわからないけど、その日の夜、不思議な夢を見た。
火傷跡なんて一切ない綺麗な顔したジロウが病院のベットの上でスウェット姿で寝ている。
やっと会えた事に胸がいっぱいな私に優しく微笑んで「大丈夫、大丈夫だからね」って言ってくれたの。
やっぱりどう考えてもジロウが好き。
触れたい、ギュッてしたい。
手を伸ばしたところでパチッと目が覚めた。
家のベットだったことに酷く落胆する。
一人で過ごすベットの上は冷たくて寂しい。
手を伸ばせばいつも触れる距離に居たのに。
朝方までたくさん愛し合ったの。
でも今は、冷たい。
完全にジロウの温もり消えちゃった。
はっきり覚えてる夢の中のジロウ。
私を想って出てきてくれたの…?
会いたくても会えなかったから。
優しく笑ってた。
心配掛けないように「大丈夫」って。
一番欲しい言葉を夢の中で言ってくれたんだね。
どんなに我慢しても、つい目頭が熱くなる。
「無理だよぉ……泣かないなんて無理、一人はやだぁ……」
静かな部屋に嗚咽と私の声が浮かんでは消えた。