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甘い蜜は今日もどこかで
第8章 【ずっといつまでも】
あぁ、無理だ、溢れちゃう。
横を向いて顔を反らしても泣いてる事はバレバレで。
誰も目につかないところで問い質された。
「喧嘩か?俺と仕事してることで上手くいってないとかではないよな?」
そんなことならどれほど良かったか。
ヤキモチ焼きのジロウとあーだこーだ言い合ってるだけなら。
隠し通すつもりもなかったけど、こちらから言えずに居た。
会社に迷惑はかけれないと懸命に務めていたが限界を迎えたか。
「すみません……ごめんなさい」と副社長の前で号泣してしまう。
アタフタしながらも事情を最後まで聴いてくれた。
つい最近、病室に行った時にちょうど処置中だったのか仕切りカーテンが全部閉まっていて数人の看護師と医師に囲まれていた。
中から悲鳴に近いようなジロウのわめき声が聴こえていて胸を締め付けられたの。
“痛い!痛い!やめてくれ!もう嫌だ!何もしたくない!”と。
これほどまでに闘っているんだ。
泣きながら処置されて。
もう、何だか自分が無力過ぎて情けなくて、不甲斐なくて。
「キミの存在が一番プラスになってるはずだ、あいつ俺に大見得を切ったんだからな?そんくらいで後退されちゃ困る……大丈夫だよ、必ず戻って来るよ、一番近くに居てあげなよ、一生頭上がらないようにしてやれば良い」
副社長がそんなことを言うもんだなら少しだけ笑った。
急で驚いただろうけど話せたことで幾分か気が楽になった。
「あいつの事となると随分泣き虫になるんだな、やっぱり妬けるな」
「え…?」
急に顔が近くになり、壁ドンする勢い。
「そんな顔するなよ、何もしねぇよ、まだ俺を玉砕させる気?あいつの弱ってる時にチャンスだ…とは1ミリ程度考えたけどな、やっぱ無理だわ」
わざとおちゃらけてくれてるんだと思うとその優しさにまた胸がいっぱいになる。
今後はせめて退院の目処がつくまでは極力定時で帰らせて欲しいと申し出た。
クリスマスもお正月も全部私はジロウと居る。
例え面会出来る時間までだとしても。
毎日顔を見て“愛してる”と伝えたいの。
「仕事は変わらず全力で取り掛からせて頂きます、どうか、宜しくお願いします!」
副社長に深々と頭を下げる。
「当たり前だ」とデコピンされちゃった。