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甘い蜜は今日もどこかで
第8章 【ずっといつまでも】





「じゃ、車戻ろうか」




「え…?ジロウ、何言ってるの?今、病院だよ?」




「ん?あれ、フワフワする……空飛んでるみたい……」




薬のせいだと看護師から説明があった。
一番キツい痛み止めを打っているらしい。
ご飯を食べさせてる時も
「椿、食べたいの?食いしん坊だな、アハハ」て笑われたり。




心配になって聞いてみたら、午前中に傷口の洗浄をして、その後、傷の痛み止めと精神安定剤を打って意識が朦朧として会話が噛み合わない状況になっている。
急な病院生活でのストレスや、他の人より薬が効き過ぎている面もあるみたいで、副作用で今はこうなっているのだという。
様子を見てみましょう、と言われた。




意識が飛んだり戻ったりするせいか、自分が今病院に居ることや火傷をしていることなど、もしかしたらわかっていなかったりするのかも知れない。
ようやく一般病棟に移れたものの、急に一人で歩き出して徘徊したらしく、危ないのでベットに腰ベルトのようなもので身体を固定させられていた。




一般病棟といっても重篤患者専用の病室だ。
お母様は離れた場所に住んでらっしゃったので毎日は来れない。
だから私が毎日ジロウの様子を細かくメールで知らせることにした。
ご飯完食しました……とか他愛もないことだけど絶対知りたいはずだから。




会話がままならないこともあるけど、とにかく今は病院で治療中なんだよって根気強く伝えた。
一緒に頑張ろうって言うけど、一番頑張ってるのはジロウだもん。
これ以上頑張れって言うのは酷だよ。











「何かあったのか?」




その声にハッとした。
慌てていつもの笑顔を作り「何がですか?」と答えても副社長にはお見通しだったに違いない。




「最近、やたら仕事詰め込んでるな、ちゃんと休めてるか?今してる作業も来週でも充分間に合うはずだ」




仕事をしていないと常に考えてしまう。
ポーカーフェイスが得意だった私も、メッキが剥がれてきたのだろうか。
時々、涙目になっているという。




「すみません、何も、ないです」




「嘘つくな、どれだけお前のこと見てると思ってるんだ」




ヤバい……もう誤魔化せない。
どうしよう。




「まぁ、いい、クリスマスの日はちゃんと彼と過ごせるのか?」









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