この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
甘い蜜は今日もどこかで
第8章 【ずっといつまでも】
頭の中ジロウばっかになる。
たった1時間弱の面会の為に走る。
渋滞してなければ1時間は会える。
私が来たことも気付いてない時もあるけど、1分1秒頑張ってるジロウに一目会う為だけに生きてるって言っても過言じゃないの。
泣いててもうなされてても傍に居たいよ。
面会名簿に名前を記入し、ナースステーションに居る看護師さんに挨拶して病室へ向かう。
あれ?昨日居た病室に居ない。
慌てて看護師さんが追い掛けて来てくれて移動した部屋まで案内される。
大部屋だったり個室だったりと救急センターでは重症度によって部屋はコロコロ変わる。
「ジロウ、来たよ」
そう声を掛けてベッド横の椅子に座る。
もうご飯も食べ終えていてボーッとしてるところだったみたい。
私を見てニコッと笑ってくれる。
「毎日、ありがとう」
「ん…?うん、私が来たいだけだから」
毎日来てることわかってくれてたんだ。
あの日から1日も欠かした事はない。
例え5分でも1分でもその顔見たさに走って来るよ。
「今日は何してたのー?」と他愛もない会話。
普段なら聞き流していたことも全部、私にとってはかけがえのない宝物みたく思える。
火傷した日、夢にジロウが出てきたことを話したら
「僕、そんな事言ってたんだぁ、でも実際はイタイ!あつい!全然大丈夫じゃない!って思ってた」だって、ウケる。
熱も37度台になっていて安心した。
ちょっと前に吉原さんも来ていたみたい。
入れ違いになっちゃった。
ちゃんと治して戻って来いって言ってくれたみたいでこっちも泣きそうになる。
「頑張らなきゃなぁ」って呟いたジロウの指先に触れる。
まだちゃんと手は握れないからこれで我慢。
いつだって応援してるし、傍に居る。
どれだけの支えになれてるかわかんないけど、2人で乗り越えたい。
約束しよ?
弱音は吐いて良いけど、希望は捨てないって。
ジロウが前を向いて這い上がって頑張るなら何だってするよ。
全てを投げ売ってでもジロウを選ぶ。
絶対に治る、また一緒に手を繋いで歩けれる。
今は目の前の小さなことから“出来ること”を増やしていかなきゃね。