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甘い蜜は今日もどこかで
第8章 【ずっといつまでも】





今話してる事も明日には忘れてるかも知れないけど、私が覚えてるから。
全部拾い上げるから。
想像を絶する痛みと闘っているからほとんど目が虚ろだけど、忘れても良いくらいどうでも良い話たくさんしてあげる。
少しでも笑ってくれたら嬉しいから。




面会時間は本当にあっという間で
「また明日来るね、おやすみ」と後ろ髪を引かれる思いで病室を後にする。
入れ違いで看護師さんが入ってきて会話が聞こえてきたから立ち止まって聞いてしまった。




「毎日来てくれてるね〜彼女さん?」




「はい……彼女です」




「へぇ、愛されてるね、彼女の為にも頑張って治そうね、治るからね」




「はい」




「彼女の名前なんて言うの〜?」




「椿……です」




「アハハ、すっごい好きそうな顔」




「はい……いつも助けられてます」




廊下だから他の看護師さんも通る。
泣きそうになりながら会話を聞いてその場を離れた。
ちゃんと認識してくれてる。
私にじゃなく看護師さんに自分の話してくれてるのが嬉しかった。




クリスマスも終わり次は忘年会シーズンだが、UNEEDの一員なのでお酒を飲む行事は出なくて良い。
だから基本的に歓送迎会や忘年会等は出た事がない。
その決まりがあって心底良かったって思ってる。
今はそんな席に出る余裕はない。
仕事が終われば病院へ直行だから。




「こっちのことは気にするな、しっかり気を持って年明けからまた頼むよ」




「今年はお世話になってばかりでありがとうございました、来年もまた宜しくお願い致します」




副社長と秘書課の皆さんに挨拶して走り出す。
やっぱりこのままでは年は越せないかな、と秘書課にだけ真実を話した。
恋人が上半身火傷を負って今入院中だということ、毎日面会に行くために残業は控えさせて頂きたいということを伝えたら親身になって理解してもらえた。
改めて良い人たちに恵まれたなと思う。




ジロウ、もうすぐ年が明けるよ。




面会時間の前に神社に行ってお参りをし、ジロウのことお祈りしてきた。
身体健康祈願のお守りを買って看護師さんに頼んだらベッドのところに付けてもらえたよ。








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